笠木望

笠木 望（かさぎ のぞむ）

1974年6月4日生まれ、北海道出身の日本の映像作家。主に映画監督として活動する傍ら、演出、脚本、映画プロデューサー、撮影監督としても多岐にわたる作品を手がけている。上智大学文学部哲学科を中退後、日活芸術学院演出科を修了し、映像制作の道を歩み始めた。

キャリアの始まりと初期の評価

笠木望氏のキャリアは、日活芸術学院の卒業制作として自主製作した短編映画『きみのジャージはどこ』（2001年）から本格的に始まった。この作品は、あきる野映画祭で観客審査員賞を受賞したほか、京都国際学生映画祭、大阪プラネット映画祭、ツタヤ・インディーズムービーフェスティバル、水戸短編映像祭など、数多くのインディペンデント系映画祭で上映され、注目を集めた。特に、水戸短編映像祭では観客賞を獲得しており、その後の活動の礎を築いたと言えるだろう。

翌2002年には、佐藤佐吉によるオリジナル脚本作品『スワンズソング』（ビデオタイトル：『少女惨殺～スワンズソング～』）で劇場公開映画の監督デビューを飾った。この作品は、社会学者の宮台真司氏が雑誌『ダ・ヴィンチ』で論評するなど、一部で反響を呼んだ。また、同年にはテレビ東京のドラマ『湘南瓦屋根物語』、2001年には同局の『キャプテンしばた』の監督や脚本を担当するなど、テレビドラマの制作にも携わっている。

広範な活動領域

笠木氏の活動は、映画監督に留まらない。2005年には浅野忠信と哀川翔が主演した映画『東京ゾンビ』で監督補佐を務めるなど、商業作品の現場経験も積んでいる。また、自身が監督する作品だけでなく、数多くの作品で脚本を担当しており、『きみのジャージはどこ』、『湘南瓦屋根物語』、『Tokyo Real』、『インキュバス』、『トップ』、『チェリー婦人』、『まるごとひょうたんロック・ユー！』、そして後述する『いざなぎ暮れた。』などがある。

さらに、映画プロデューサーとしての顔も持ち、『リトルホスピタル』（テレビ東京）、山本政志監督の『TOKYO OF THE DEAD』、『聴かれた女』（蒼井そら主演）、『オモチカエリの物語』（BeeTVドラマ）、『女流闘牌伝 aki』、『ノーマーク爆牌党』など、多岐にわたるジャンルの作品をプロデュースしている。舞台演出も手がけており、『By The Way』、『Sadバラッド』、『14日の12人』といった作品に関わった実績を持つ。

加えて、撮影監督としても多くの作品に参加しており、林原めぐみ、BABY BOO、Mellow Yellow、桃井はるこ、聖飢魔IIといった著名アーティストのミュージックビデオや、ナスカ、トリカブトなどの映像を手がけるなど、その活動範囲は非常に幅広い。

代表作『いざなぎ暮れた。』と国際的な評価

2019年、笠木氏は自身にとって初のオリジナル脚本による長編映画『いざなぎ暮れた。』を監督した。この作品は、公開後、国内外で高い評価を獲得することとなる。特に、世界的に権威のある第53回ヒューストン国際映画祭では、審査員特別賞と最優秀外国語映画賞を同時に受賞するという、邦画としては初の快挙を達成した。この他にも、『いざなぎ暮れた。』は実に27もの国際映画祭で正式上映されたほか、アメリカンゴールデンピクチャー国際映画祭での脚本賞や音響賞、助演女優賞、フロストバイト国際映画祭での主演男優賞、カウチ国際映画祭、デプス・オブ・フィールド国際映画祭、クラウンウッド国際映画祭、ホワイトユニコーン国際映画祭、ベアボーンズ国際映画祭など、数多くの映画祭で最優秀作品賞や最優秀外国作品賞、最優秀国際長編映画賞などを受賞しており、笠木望氏の才能が国際的に認められる大きな契機となった。

初期のインディペンデント作品から、劇場公開作品、テレビドラマ、オリジナルビデオ、そして国際的な受賞作まで、様々な形式と規模の映像作品に携わる笠木氏の活動は、日本の映像業界においてユニークな存在感を放っている。監督、脚本家、プロデューサー、撮影監督といった複数の役割をこなしながら作品を生み出すスタイルは、今後の活動にも注目が集まるだろう。

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