笠谷圭見

笠谷圭見（かさたに よしあき）は、1969年5月22日に大阪府で生まれた日本の映画監督であり、多岐にわたる分野で活動するクリエイティブディレクターでもあります。デザインとアートの力を用いて、社会、特にこれまで光が当たりにくかった人々の内面や暮らしに光を当てる活動を続けています。

キャリアの始まりとクリエイティブディレクション

キャリアの初期において、笠谷氏は大阪と東京に拠点を置くデザイン会社、RISSI INC.でクリエイティブディレクターを務めました。この時期、広告、グラフィックデザイン、映像制作、空間演出など、幅広い領域で指揮を執り、多分野にわたるクリエイティブワークの経験を積みました。この多様な経験が、その後の彼の独自の活動スタイルを形成する基盤となりました。

社会貢献活動とアウトサイダー・アート

デザイン分野での活動と並行して、笠谷氏は社会貢献活動への関心を深めていきます。2011年には、障害者によるアウトサイダー・アート（アール・ブリュット）の普及を目的としたプロジェクト「PR-y」を発足させました。この活動を通じて、パリやプラハに研究拠点を持ち、アール・ブリュットの世界的な権威として知られるabcd協会との親交を深めるなど、国内外のネットワークを築き上げます。アートが持つ表現の力や、それを通じて生まれる社会との接点を探求する姿勢は、以降の彼の活動の重要な柱となります。

ファッションと映像制作への展開

2012年には、ファッションブランド「DISTORTION3」をプロデュースし、このブランドは世界15カ国で販売されるなど国際的な展開を見せました。このプロジェクトは、後に彼の映像作家としてのキャリアのきっかけとなります。2016年には、DISTORTION3の世界観を描いた自身初の監督作品となる短編映画「A Short Film About DISTORTION」を制作・公開しました。この作品では、俳優の松田美由紀氏がナレーションを担当しています。

福祉との関わりとドキュメンタリーへの道

笠谷氏の社会貢献活動は、デザインの力を通じた具体的な実践へと繋がっていきます。障害者施設を題材にしたフォトブックの出版や写真展の開催などを通じて、福祉施設との連携を深めました。特に、福祉施設の合同展覧会での出会いを機に、滋賀県にある社会福祉法人と継続的な関係を築き、障害のある方々のポートレート写真集や短編映像作品の制作に取り組みました。これらの経験は、彼がドキュメンタリー映画という表現手段を選び取る上で重要なステップとなります。

ドキュメンタリー映画監督として

福祉施設との深い関わりの中で、笠谷氏はドキュメンタリー映画『地蔵とリビドー』を監督しました。この作品は2018年に公開され、障害のある人々の内面や日常を独特の視点から描いたことで注目を集めます。日本国内での上映に加え、アメリカ、スイス、香港など海外でも上映され、国際的な評価を得ました。その後も映像制作を続け、2023年には『夜の舟』を発表するなど、ドキュメンタリー映画監督としての活動を精力的に行っています。

著作

映像作品以外にも、笠谷氏は著作を発表しています。ファッションブランド「DISTORTION」に関する書籍『A Book About DISTORTION』が、2016年にやまなみ工房から刊行されています。

クリエイティブディレクターとして培った多様な視点と、社会の多様性への深い敬意を基盤に、笠谷圭見氏はデザイン、アート、福祉、そして映像制作といった複数の領域を横断しながら、独自の表現世界と社会との繋がりを探求し続けています。

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