笠谷昌生

笠谷昌生は、1935年1月14日に北海道岩内町で生まれました。スキージャンプを始めたのは高校入学直前と遅かったものの、才能を開花させ、瞬く間に頭角を現しました。高校時代には「神童」と呼ばれるほどの活躍を見せ、インターハイでは同僚が優勝する中、自身は明治大学に進学し、スキー部主将を務めました。大学時代には、ライバル関係にあった選手たちと共に、各大学のスキー部を牽引しました。

大学卒業後は、羽幌炭鉱に所属し、兄の協力のもと50m級ジャンプ台を完成させました。このジャンプ台は、当時としては大倉シャンツェと並ぶ大型のものでした。競技者としては、1960年の全日本選手権で弟の笠谷幸生に敗れたことを機に現役を引退し、指導者としての道を歩み始めました。

羽幌炭鉱の監督として、弟の幸生をはじめ、ジャンプや距離の選手育成に尽力しました。特筆すべきは、コーチ就任後間もなく、ビデオカメラを導入して映像で踏み切り動作を解析するという、当時としては画期的な方法を日本で初めて取り入れたことです。この先見の明が、後の日本ジャンプ界の発展に大きく貢献しました。

1966年には全日本チームのコーチに就任しました。新任コーチ時代には、海外経験豊富な弟の幸生に逆に教えられることもありましたが、それを機に英会話能力を身につけるなど、コーチとしての技術を磨きました。その努力は、1972年の札幌オリンピックで結実し、幸生を筆頭に日本勢が表彰台を独占するという快挙を成し遂げました。また、その人望の厚さから、国際大会でコーチ会議が紛糾した際には、最終的な意見を求められるまでになり、アルペンのトニー・ザイラーと並び称されるほどの存在となりました。

その後、東日本観光サービス専務の他、国際スキー連盟のジャンプ委員会委員、全日本スキー連盟ジャンプ部長、強化委員長、国際スキー連盟ジャッジなど、要職を歴任しました。指導者としての功績は高く評価され、1984年には北海道新聞スポーツ賞、1997年にはミズノスポーツメントール賞を受賞しました。

2009年2月18日、肺炎のため74歳で亡くなりました。笠谷昌生は、選手としてだけでなく、指導者としても日本のスキージャンプ界に多大な貢献をした人物として、その名は長く語り継がれるでしょう。

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