第一次カッペル戦争

第一次カッペル戦争

第一次カッペル戦争（Erster Kappelerkrieg）は、1529年のスイスにおけるカトリック派と宗教改革派の対立を背景にした歴史的な出来事である。この戦争は、カトリックとプロテスタントが対立する中で起こり、実際の戦闘は行われずに和解によって終息したため、戦争というよりも複雑な宗教的背景を持つ対立と考えられる。

背景

スイスは当時、都市国家が形成され、それぞれが独自の経済的・政治的利害を持つ場所であった。特に、チューリッヒやベルンといった都市は強力な発展を遂げ、13の邦が互いに同盟を結んでいた。1520年代には、チューリッヒの宗教改革者フルドリッヒ・ツヴィングリにより、改革派が急速に広まり、カトリック派との対立が激化した。ツヴィングリの教えは、スイス東部の地域において広まり、カトリック派の森林諸州との軋轢を生んだ。

宗教改革の進展

スイスの宗教改革は、ツヴィングリの活動により進展し、教会の教義に対する抵抗が起こった。ツヴィングリは、カトリックの教義に反発し、教会の改革を目指したが、誓約同盟の他邦とは意見が対立した。これにより、充分な支持が得られなかったものの、彼の教えは周辺地域に影響を与え、やがてカトリックとプロテスタントの対立がより明確となる。

戦争の引き金

1528年、スイスのカトリック派は改革派の勢力増加に対抗するため、キリスト教連合を結成。これにより、スイス国内の緊張が高まり、対立が激化した。特に、シュタムハイム事件など、両派の衝突が続いていた。このような背景の中、1529年6月、チューリッヒはカトリック派への宣戦布告に踏み切った。

カッペルのミルクスープ

戦争を前に、両軍はカッペル村で対峙した。ここで、双方の兵士が和解を望み、共にミルクスープを作って食事を取る姿が見られた。この出来事は、戦意が薄れたことを示し、後に『カッペルのミルクスープ』と呼ばれることとなった。仲裁に入った者たちが和解の必要性を説き、実際には戦闘が行われずに和解に至ったのだ。

和解の結果

この和解は1529年6月26日に文書化され、「第一次カッペルの和議」として知られることとなる。和解の内容は、ミサや布教の自由が認められ、カトリック派は一定の譲歩を余儀なくされてしまった。この合意は、宗教層の抑圧を受けたカトリック派にとっては苦い結果であり、ツヴィングリの改革の野望も絶たれることとなった。

和解後の状況

この後、ツヴィングリは他のプロテスタント指導者たちとの会合を模索するが、様々な問題により彼らと連携することは難しかった。彼が望んだ宗教の統一は実現せず、再びカトリックとプロテスタントの対立が激化していく。1531年には第二次カッペル戦争が発生し、ツヴィングリはその戦闘で命を落とすこととなる。この戦争は、スイスの宗教界に新たな分裂をもたらし、以降の宗教改革にも影響を与えることとなった。

現在のカッペル

カッペル村には、第一次カッペル戦争の逸話を記念する碑が建てられているが、実際の和解の場所とは異なるとも言われている。この事件は、スイスにおける宗教的和解の象徴とされ、人々に深い印象を残している。

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