フルドリッヒ・ツヴィングリ

ウルリッヒ・ツヴィングリ：スイス宗教改革の先駆者

1484年1月1日、スイスのザンクト・ガレン州に生まれたウルリッヒ・ツヴィングリは、スイスにおける宗教改革の主要人物であり、スイス改革派[[教会]]の創始者として知られています。マルティン・ルターと並び称される宗教改革の立役者の一人ですが、ルターとは異なる道を歩み、その知名度はルターほど高くありません。ツヴィングリは、ウィーン大学とバーゼル大学で学び、人文主義者としての素養を培いました。1506年に司祭に叙階され、その後、チューリッヒの聖堂説教師として活躍するようになります。

聖書に基づく宗教改革

ツヴィングリは、聖書を信仰の唯一の基準とする「聖書のみ」の原則を掲げ、当時のカトリック[[教会]]の様々な慣習や教義に疑問を抱きました。1519年には、贖宥状販売を行う説教師を批判する説教を行い、カトリック[[教会]]との対立を鮮明にしていきます。この頃から、ツヴィングリは聖書に基づいたキリスト教の刷新運動を推進し、チューリッヒ市参事会と協力して宗教改革を進めました。

改革の過程では、教会制度の簡素化、聖像の破壊、修道院の閉鎖などが行われ、また司祭の独身制も廃止されました。1525年には、従来のミサに代わる独自の聖餐式を導入し、チューリッヒにおける宗教改革を完成させました。しかし、ツヴィングリの改革は、チューリッヒ市内に留まらず、スイス全土に波及しようとするものでした。

ルターとの出会い、そして対立

ツヴィングリは、ルターと同様に「聖書のみ」を信仰の基準としていましたが、聖餐論においては大きな相違点がありました。ルターが聖体の共在説を唱えたのに対し、ツヴィングリは象徴説を主張しました。この相違は、1529年のマールブルク会談においても解消されず、両者の関係は決裂しました。さらに、ツヴィングリは礼拝における音楽を一切廃止した点も、ルターとの違いとして挙げられます。

スイスにおける宗教対立とカッペル戦争

ツヴィングリは、チューリッヒにおける改革をスイス全土に広げようと試みましたが、急進的な改革を求めるアナバプテストや、ルター派との対立、そしてカトリック諸州との政治的対立に直面しました。スイスは、中央集権的な国家ではなく、諸州が緩やかに統合された形態であったため、宗教改革はスイス諸州間の対立を招きました。

対立は、話し合いによる解決を試みるも失敗し、最終的に武力衝突へと発展しました。ツヴィングリは、カトリック諸州と2度にわたるカッペル戦争を戦いましたが、1531年10月11日、第2次カッペル戦争において戦死しました。ツヴィングリの死後、チューリッヒはカルヴァン派と合流し、スイス改革派[[教会]]の基礎を築いていきました。ツヴィングリが残した思想や改革は、今日でもスイス改革派[[教会]]に大きな影響を与えています。彼の生涯は、宗教改革という激動の時代における、信仰と政治、そして人間の葛藤を描いたドラマと言えるでしょう。

もう一度検索