第六次イタリア戦争

第六次イタリア戦争：ハプスブルク家とフランスの激突

第六次イタリア戦争（1551年 - 1559年）は、ハプスブルク家とフランス王国の間で繰り広げられたイタリア戦争の最終局面であり、ヨーロッパの勢力均衡を大きく揺るがした戦いです。この戦争は、フランス王アンリ2世が神聖ローマ皇帝カール5世に宣戦布告したことで始まりました。

戦争の背景

アンリ2世は、父王フランソワ1世の遺志を継ぎ、イタリアにおけるフランスの権威回復とヨーロッパでの影響力拡大を目指しました。しかし、その試みはハプスブルク家の強固な抵抗にあい、最終的には失敗に終わります。この戦争では、火薬の重要性、砲撃に耐える築城術、兵士の専門化（傭兵の衰退）といった軍事技術の変化が明確になりました。

戦争の経過

地中海での戦い

1550年、カール5世の命を受けたアンドレア・ドーリアがマーディアを占領。これに対抗するため、アンリ2世はオスマン帝国のスレイマン1世と同盟を結びました。フランスはライン川左岸に侵攻し、フランス＝オスマン連合艦隊が南フランスを守備しました。

1551年のオスマン帝国によるトリポリ包囲戦が戦争の序曲となり、フランスのガレー船はオスマン艦隊との合流を命じられました。1552年、連合艦隊は南イタリアのカラブリア沿岸を荒らし回り、ポンツァ島の戦いではアンドレア・ドーリア率いる艦隊に勝利しました。その後もコルシカ島を占領するなど、地中海でハプスブルク領を攻撃し続けました。

陸上での戦い

大陸では、1552年にアンリ2世がドイツのプロテスタント諸侯と同盟を結び、ロレーヌの三司教領を占領しました。1554年にはハプスブルク軍をレンティの戦いで撃退したものの、イタリアでは敗北が続きました。トスカーナでは、シエーナ共和国を支援するために侵攻したもののマルチャーノの戦いで敗れ、シエーナは後にトスカーナ大公国の一部となりました。

1556年にヴォーセル条約が締結され、フランシュ＝コンテ地方がスペインに割譲されましたが、条約はすぐに破棄されました。カール5世の退位後、戦場はフランドルに移り、フェリペ2世はサン＝カンタンの戦いでフランスに勝利しました。しかし、イングランドを巻き込んだものの、カレーを失い、フランス軍はネーデルラントを略奪する結果となりました。

戦争の終結

1557年、スペインとフランスは相次いで財政破綻を宣言し、フランス国内ではユグノー問題も発生しました。結果として、アンリ2世はイタリアへの主張を放棄し、カトー・カンブレジ条約を締結しました。

カトー・カンブレジ条約

1559年4月3日に締結されたこの条約で、フランスはピエモンテとサヴォワをサヴォイア公に、コルシカ島をジェノヴァ共和国に返還しましたが、カレーと三司教領を獲得しました。スペインはフランシュ＝コンテ地方を保持し、イタリアにおける影響力を拡大しました。この条約は、60年間にわたるイタリア戦争を終結させました。

条約締結後、アンリ2世は馬上槍試合で事故死し、ヨーロッパの歴史は新たな局面を迎えます。

戦争の影響

この戦争は、軍事技術、政治力学、そして各国の勢力バランスに大きな影響を与えました。フランスは領土を拡大したものの、イタリアにおける支配権確立には失敗し、ハプスブルク家のヘゲモニーを崩すことはできませんでした。一方、スペインはイタリアにおける影響力を確固たるものにし、唯一の大国としての地位を確立しました。イングランドはカレーを失い、大陸における影響力を低下させました。

軍事面では、この戦争を通して、傭兵の限界が露呈し、常備軍の重要性が認識されました。また、築城技術の進歩が砲撃の効果を減少させたことも、重要な変化として挙げられます。

結論

第六次イタリア戦争は、ハプスブルク家とフランスの長きにわたる対立を象徴する出来事であり、その結果は、後のヨーロッパの歴史に大きな影響を与えました。戦争の終結は、一見するとフランスにとって満足のいく結果に見えるかもしれませんが、より広い視点から見ると、ハプスブルク家の覇権を揺るがすことができなかった点で、その影響は限定的であったと言えるでしょう。

もう一度検索