第1回印象派展

第1回印象派展：革新の幕開け

1874年4月15日から5月15日にかけて、パリで開催された「画家、彫刻家、版[[画家]]などによる共同出資会社の第1回展」、通称「第1回印象派展」は、美術史における重要な転換点となりました。クロード・モネ、エドガー・ドガ、ピエール＝オーギュスト・ルノワール、カミーユ・ピサロといった、後に印象派を代表する画家たちが集い、サロン（官展）の保守的な体制に異を唱え、独自の表現を追求したのです。30名の画家が出品した165点の作品は、当時の美術界に大きな波紋を広げました。

展覧会開催の背景

バティニョール派の形成

印象派の画家たちは、当初から一枚岩の集団だったわけではありません。モネ、ピサロ、セザンヌ、ギヨマンらはアカデミー・シュイスで、モネ、バジール、ルノワール、シスレーらはグレールの画塾でそれぞれ親交を深めました。これらのグループは、モネの仲介によって互いにつながりを持ち、モンマルトルのカフェ・ゲルボアに集まって、芸術について熱い議論を交わすようになりました。マネを中心に、エミール・ゾラなどの文学者、批評家、そしてドガ、ルノワール、ピサロなどの画家たちが集まったこのグループは、「バティニョール派」または「マネ派」と呼ばれ、新しい芸術の創造を目指しました。

サロンの保守傾向と「落選者展」

当時のフランス美術界は、アカデミーが主導するサロンが権威を持っており、古典主義的な規範が重視されていました。そのため、印象派の画家たちの作品は、サロンの審査でしばしば落選の憂き目に遭いました。1863年には、サロンの落選作品を集めた「落選者展」が開催され、マネの『草上の昼食』などがスキャンダルを巻き起こしましたが、同時にサロンのあり方に対する批判が高まるきっかけとなりました。しかし、1867年以降は落選者展の開催も拒否され、印象派の画家たちは、サロンに頼らない独自の発表の場を模索せざるを得なくなりました。

グループ展の挫折と再構想

1867年の落選者たちはグループ展を企画しますが、経済的な理由から実現には至りませんでした。1870年から71年にかけての普仏戦争も、彼らの活動に大きな影響を与えました。マネは兵役につき、モネやシスレーはロンドンへ避難するなど、画家たちは離散を余儀なくされました。しかし、戦争終結後、画家たちは再び集まり、1873年の恐慌で画商の支援が打ち切られたことを機に、より安定した作品発表の場として、グループ展の開催を改めて計画しました。

「画家、版[[画家]]、彫刻家等、芸術家の共同出資会社」の設立

構想

グループ展の開催に向けて、モネを中心に組織作りが進められましたが、組織のあり方を巡っては意見の対立もありました。ドガは、サロン入賞経験のある画家も招待すべきだと主張し、展覧会が前衛的すぎると受け止められることを懸念しました。最終的には、経済的な理由からドガの提案が受け入れられました。ピサロは、パン製造業者の組合をモデルとした協同組合の結成を提案しましたが、管理規約を嫌うルノワールによって退けられました。そして、株式会社設立の素案が作成され、ルノワールが管理者となりました。

設立

ドガは、展覧会を中立的なものとするために、グループの名前に「ラ・カピュシーヌ」という名称を提案しましたが、最終的には「画家、版[[画家]]、彫刻家等、芸術家の共同出資会社」という名前になりました。1873年12月27日に設立されたこの会社は、年会費60フランを支払えば誰でも参加できるというもので、モネ、ルノワール、シスレー、ドガ、ピサロなど16名が創設メンバーとなりました。

グループ展の開催

第1回展覧会

1874年4月15日、カピュシーヌ大通り35番地のナダールが使用していたアトリエで、第1回展覧会が開幕しました。30名の芸術家が出品した165点の作品は、サロンの開催時期を意識してか、その2週間前に公開されました。ルノワールが中心となって展覧会の構成が行われ、出品場所は抽選で決定されました。規則では、年会費を支払えば2作品を展示する権利が得られることになっていましたが、多くの画家がそれ以上の作品を出品しました。

「印象派」という名称

批評家のルイ・ルロワが、風刺新聞「ル・シャリヴァリ」で「印象派の展覧会」と題した批評文を掲載し、モネの『印象、日の出』にちなんで、出品作品を「印象派」と酷評しました。しかし、この呼称は他の批評家にも広まり、美術評論家のジュール＝アントワーヌ・カスタニャリは、「カピュシーヌ大通りの展覧会」という記事の中で、印象派の画家たちの新しい試みを評価しました。こうして、「印象派」という言葉は、一般大衆にも浸透していきました。

成果と影響

第1回展の入場者数は3,500人と、サロンに比べてごくわずかでしたが、展覧会の収支は黒字となりました。しかし、ほとんどの画家は年会費を回収できずに展覧会を終え、会員たちは借金の支払いのために追加の費用を負担しなければなりませんでした。その後、13人の会員が組織の解散に同意しました。

この展覧会は、当初は冷笑の対象となりましたが、旧来の写実主義や遠近法を離れ、光の効果を重視し、感覚に正直に印象を描く画法として、美術界に大きな影響を与えました。印象主義は、戸外制作、固有色の否定、影からの黒色の排除、筆触の並列、色調の分割などを特徴とし、絵画だけでなく芸術全般に影響を及ぼしました。印象派展覧会はその後も8回開催され、美術史にその名を刻みました。

第1回印象派展は、まさに革新の幕開けであり、その後の美術のあり方を大きく変える原動力となったのです。

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