第1次アル＝ファオの戦い

第1次アル＝ファオの戦い

第1次アル＝ファオの戦いは、イラン・イラク戦争の中で1986年に勃発した重要な軍事衝突であり、イラクのファオ半島を巡って繰り広げられました。この戦いは、イラクの南端に位置するファオ半島の防御状況が弱体化していることを見越してイラン軍が攻撃を仕掛けた結果、激しい戦闘となりました。

戦闘の背景

イラン・イラク戦争が始まった当初、イラク軍はバスラ正面の防御に追われ、ファオ半島の防御態勢が手薄にされていました。一般的には、イラン軍がこの地域に侵攻するリスクは低いと考えられていました。その理由は、シャッタルアラブ川という天然の障害物が存在し、加えてイラン軍が揚陸作戦を行うための十分な資源を持っていないとの見方があったからです。しかし、イラン軍はファオ半島に攻撃を仕掛けることを決め、特にイラクの経済基盤である石油の積出港を奪取することで戦局に影響を与える狙いを持っていました。

攻撃準備と実行

イラン軍は、1986年2月11日の革命記念日を意識し、舟艇の準備を整えるとともに、パフラヴィー時代に発注した2隻の揚陸艦が到着しました。この頃、イラン軍はまた、イラン・コントラ事件を通じて米国から多くの兵器を調達し、特に対戦車用の火力を強化することができました。

夜間の攻撃は成功を収め、1986年2月9日、イラン軍はシャッタルアラブ川を渡りファオ半島西岸を占領しました。以降、イラン軍はバスラへの進軍を目指して勢いを増しました。事態を重視したイラク軍は第7軍団を投入し、反撃に転じます。この間、イラク軍は化学兵器を使用するなど大規模な攻撃を仕掛けましたが、イラン軍は事前にガスマスクを用意していたため対抗策を講じていました。

戦況の推移

2月16日、イラク軍は追加の火力を投入しましたが、イラン革命防衛隊の攻撃を食い止めることはできず、イラク第111旅団は壊滅的な打撃を受けました。そして、イラン軍はウムカスル港へ向かう攻撃を続けましたが、ここでも激しい戦闘が繰り広げられました。両軍は膠着状態に陥り、ファオ半島を一時的に占領したイラン軍は防御体制を固めることに成功します。

戦後の影響

戦闘が続く中で、イラン軍の士気は高く、戦力の回復が見込まれました。一方で、イラク軍は混乱に陥り、フセイン政権の存続にも懸念が広がりました。特に、イラン軍がクウェートに非常に近づいたことで、湾岸の諸国には恐慌が広がり、地域の安定に深刻な影響を及ぼしました。

この戦いは、イラン・イラク戦争の中でも特に重要な局面の一つであり、戦争の行方を大きく左右する結果となったのです。

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