第1次ディズレーリ内閣

第1次ディズレーリ内閣：短命に終わった改革政権

1868年2月、保守党党首のベンジャミン・ディズレーリは、病に倒れたダービー伯爵の後継として首相の座に就きました。これは、ダービー伯爵本人の推薦と党内の強い支持を受けた結果でした。ディズレーリは、前任内閣の大部分を維持しつつ、大法官だけは更迭するという、比較的穏やかな内閣改造を行いました。

しかし、この内閣は、少数与党という不安定な立場にありました。そのため、政策実現には大きな困難が伴いました。ディズレーリは、議会での激しい抵抗を避けるため、官僚が作成した超党派的な法案を中心に政策を進めました。

主な政策と成果

第1次ディズレーリ内閣は、短い期間でしたが、いくつかの重要な法律を成立させました。その中には、選挙における買収を初めて明確に禁止し、罰則を設けた腐敗行為防止法、公立学校に関する法律、鉄道に関する法律、スコットランドの法制度に関する法律、公開処刑の廃止を定めた法律、そして郵便局に電報会社を買収する権限を与える法律などがあります。これらの法律は、超党派的な支持を得ていたため、少数与党であったディズレーリ政権でも円滑に議会を通過させることができました。

外交面では、エチオピアへの軍事行動を引き継ぎました。イギリス人を拉致したエチオピアに対し軍事侵攻を行い、マグダラを陥落させ、皇帝テオドロス2世は自害に追い込まれました。拉致されたイギリス人を救出後、ディズレーリはエチオピアへの領土的野心を示すことなく、速やかに軍隊を撤退させました。

総選挙の敗北と総辞職

1868年11月に実施された総選挙は、保守党にとって大きな敗北となりました。保守党は、改選前よりも議席数を減らし、自由党が圧倒的な勝利を収めました。この結果を受け、ディズレーリは12月3日、新議会の招集前に総辞職しました。

これは、イギリス政治史上、総選挙の敗北を直接の理由として首相が辞任した最初の事例となりました。それ以前は、総選挙で敗北しても、議会での不信任決議や重要な法案の否決がない限り、首相が辞任することはほとんどありませんでした。ディズレーリの決断は、以降のイギリス政治における慣例となりました。選挙で国民の信任を失えば、首相は責任を取って辞任すべきだという、現代政治の常識を確立したと言えるでしょう。

結論

第1次ディズレーリ内閣は、短い期間でしたが、重要な政策をいくつか実現し、イギリス政治の慣例にも影響を与えた政権でした。少数与党という不利な状況の中でも、超党派的な協力と効率的な政策遂行によって、いくつかの改革を実現した点は特筆に値します。しかし、総選挙での敗北という結果が、その短い寿命を決定づけたのです。

もう一度検索