第105師団 (日本軍)

第105師団：ルソン島での激戦と三分割された運命

第105師団は、1944年5月に策定された「十一号作戦準備」に基づき、フィリピンにおいて独立混成旅団を基幹に編成された大日本帝国陸軍の師団の一つです。編成後、ルソン島南部での防衛任務に就きましたが、その後の転進命令により、部隊は三分割され、それぞれが異なる指揮系統下で戦うことになりました。

編成と初期配置

1944年6月、第105師団はルソン島南部に所在していた独立混成第33旅団を基幹として編成され、第14方面軍の隷下に入りました。師団は、独立混成第33旅団の担当地域を引き継ぎ、主力はビコル半島地区、一部は河嶋修少将の河嶋支隊に属してラモン湾の防衛を担当しました。

転進による三分割

当初、第105師団は第8師団と共にルソン島南部の防衛を担う予定でしたが、年末に第14方面軍の防衛計画が変更されたことにより、第105師団はルソン島北部への転進を命じられます。この転進計画は当初、歩兵第82旅団を基幹とする河嶋支隊に指令されていましたが、河嶋少将が振武集団（第41軍）の指揮下に入り河嶋兵団を編成、マニラ北東のイポの防衛に当たることになったため、第105師団の主力に北部への転進が指令されました。

第105師団司令部は、師団の主力を率いて北部に転進しました。その際、ビコル半島に残っていた歩兵第81旅団長の野口進少将は、後続部隊の指揮を命じられました。しかし、タヤバス湾へのアメリカ軍上陸という虚報により、後続部隊の転進は遅れ、最終的にはルソン島北部への転進を断念、振武集団の指揮下に入り野口兵団を形成することになります。

このようにして、第105師団は師団主力の本隊、河嶋兵団、野口兵団の三つに分割された状態でルソン島の防衛に当たる事になりました。司令部はこの転進の指導のために多くの参謀や副官を派遣しており、要員不足に直面しましたが、第14方面軍からの補充により改善されました。

戦闘と終戦

1945年1月9日、アメリカ軍がリンガエン湾に上陸すると、第105師団主力はカガヤン付近の戦いで敗北、その後はアメリカ軍の圧力を受け山岳地帯に退却し、キアンガンの防衛を終戦まで続けました。一方、マニラ東方にあった野口兵団と河嶋兵団は、米軍との持久戦を終戦まで継続しました。

師団概要

歴代師団長

津田美武 中将：1944年6月21日 - 終戦

参謀長

原田義尚 中佐：1944年6月21日 - 1944年11月7日
島田永男 大佐：1944年11月7日 - 1945年6月28日（自決）
中沢勝三郎 大佐：1945年6月30日 - 終戦

最終司令部構成

参謀長：中沢勝三郎大佐

最終所属部隊

歩兵第81旅団（広島）：野口進少将
独立歩兵第181大隊：黒宮隆文大佐
独立歩兵第182大隊：木村忠孝少佐
独立歩兵第183大隊：牟田元次大佐
独立歩兵第185大隊：杉山欽次郎中佐
歩兵第81旅団通信隊
歩兵第81旅団作業隊
歩兵第82旅団（浜田）：河嶋修少将
独立歩兵第184大隊：二宮曻中佐
独立歩兵第186大隊：沖田一夫大佐
独立歩兵第358大隊：笠間哲行少佐
独立歩兵第359大隊：大藪富雄少佐
歩兵第82旅団通信隊
歩兵第82旅団作業隊
第105師団砲兵隊：漆谷英人少佐
第105師団工兵隊：落合鋠一大佐
第105師団通信隊：鹿沼次郎大尉
第105師団輜重隊：吉田泰助少佐
第105師団野戦病院：遠藤信義少佐
第105師団病馬廠：吉田清作大尉
第105師団防疫給水部：中嶋清博少佐

参考文献

戦史叢書・第60巻 捷号陸軍作戦（2） （防衛庁防衛研修所戦史部編・朝雲新聞社）
秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
外山操編『陸海軍将官人事総覧 陸軍篇』芙蓉書房出版、1981年。
『別冊歴史読本 戦記シリーズNo.32 太平洋戦争師団戦史』、新人物往来社、1996年。

関連項目

大日本帝国陸軍師団一覧
* ルソン島の戦い

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