第109飛行隊 (イスラエル空軍)

イスラエル空軍 第109飛行隊：ヴァレー・スコードロンの軌跡

イスラエル航空宇宙軍に所属する第109飛行隊、通称ヴァレー・スコードロンは、その長い歴史の中で、数々の重要な役割を果たしてきた精鋭部隊です。創設から現在に至るまでの変遷を辿り、その輝かしい軌跡を紐解きます。

創設と初期

1951年7月、第109飛行隊はテルノフ空軍基地において、25機のデ・ハビランド モスキート FB.6を主力とする攻撃機部隊として誕生しました。これは、イスラエル空軍初の本格的な対地攻撃部隊であり、モスキートを装備した最初の飛行隊でもありました。写真偵察型であるモスキートPR.16も戦闘爆撃機型に改造され、戦力として運用されました。その後、拠点をハツォール空軍基地に移し、1953年には同基地でモスキートを運用する第110飛行隊が編成されました。

機体の塗装は、モスキートFB.6が銀色、T.3が黄色で、第109飛行隊の機体はスピナーとラダーが赤色に塗装されていました。1955年頃からは、ダークブルーとブラウンの2色迷彩が施されるようになります。

第二次中東戦争と再編成

1956年の第二次中東戦争当時、モスキートは旧式化しており、第109飛行隊は一時的に解散状態にありました。そのため、同じくモスキートを装備していた第110飛行隊とは異なり、第二次中東戦争には参加しませんでした。

しかし、同年8月にはラマト・ダヴィド空軍基地で再編成され、37機のミステールIV Aを装備する部隊として復活を遂げました。第101飛行隊に次いでミステールIV Aを装備する2番目の飛行隊となりましたが、パイロットの訓練が遅れ、1956年の第二次中東戦争には参加できませんでした。その後は、シリア軍やエジプト軍のMiG戦闘機との交戦を経験しました。

第三次中東戦争とスカイホークの導入

1962年頃からは、ミステールと同じダッソー製のミラージュIIICJ戦闘機の運用が始まり、ミステールは対地攻撃専用機として使用されるようになりました。1967年の第三次中東戦争（六日戦争）では、緒戦のエジプト軍、シリア軍の航空基地への奇襲攻撃（フォーカス作戦）にミステール、ウーラガンが投入され、第109飛行隊も戦果を挙げました。

1967年末には、第109飛行隊のミステールIV AはA-4H スカイホーク攻撃機に更新され、イスラエル空軍でA-4スカイホークを運用する最初の飛行隊となりました。ミステールIV Aは、引き続き同機種を運用する第116飛行隊に移管されました。1968年にはヨルダン川西岸地区でのファタハの拠点攻撃にA-4スカイホーク攻撃機が初めて実戦投入されました。

1970年には、第109飛行隊の飛行隊長であるエズラ・ドタン大佐の乗るA-4スカイホークが、シリア軍のMig-17を対地攻撃用のロケット弾と30mm機関砲で撃墜するという、珍しい事例が発生しました。これはイスラエル空軍におけるA-4スカイホークの唯一の空対空戦闘での撃墜記録と言われています。

第四次中東戦争とクフィルの導入

1973年の第四次中東戦争における第109飛行隊の作戦行動の詳細は不明ですが、A-4スカイホークを装備する6個飛行隊が参戦していることから、同飛行隊も対エジプト、対シリア戦線に参加していたと考えられます。また、同時期にA-4Hスカイホークのエンジンパイプ延長などの改修が施され、A-4Nが追加配備されました。

1977年7月には、第109飛行隊の装備機はクフィルC1に更新され、この機種を装備する3番目の飛行隊となりました。クフィルC1にはその後、小型カナード翼が追加されました。1980年にはクフィルC1は改良型のクフィルC2、および練習機型のクフィルTC2に更新され、クフィルC1は第254飛行隊に移管されました。

ガリラヤの平和作戦と解隊、そして再編成

1982年6月のガリラヤの平和作戦では、シリア軍やPLOの拠点への対地攻撃、シリア軍の対空ミサイルサイトの制圧任務に投入されました。1983年頃には新型のクフィルC7が開発されましたが、第109飛行隊のC2はC7への更新はされず、同等仕様への改修にとどまったと見られています。その後、第109飛行隊は1986年頃に一旦解隊されました。

1991年、第109飛行隊は第101飛行隊から移管されたF-16D Block30を運用する攻撃飛行隊として再編成され、ラマト・ダヴィド空軍基地で現在も活動を続けています。

まとめ

第109飛行隊は、創設以来、様々な機種の戦闘機を運用し、数々の戦いを経験してきた歴史ある部隊です。その活動は、イスラエル空軍の発展と安全保障に大きく貢献しています。

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