第11回社会人野球日本選手権大会

第11回社会人野球日本選手権大会（1984年）

1984年（昭和59年）10月21日から29日までの9日間、大阪球場を舞台に第11回社会人野球日本選手権大会が開催されました。前回の大会で変更があった近畿・四国地区の出場枠は、今大会では近畿6、四国2と元の数に戻されました。

この年の夏、都市対抗野球の決勝で激しい打撃戦を繰り広げた日産自動車と日本鋼管が、揃って予選で敗退するという波乱がありました。一方で、電電北海道、日本IBM野洲、そして三菱重工長崎の3チームが初めて本大会の舞台に姿を見せました。

この大会の大きな特徴となったのが、金属バットの各チームへの浸透でした。打者は金属バットへの対応が進み、その結果、例年に比べて桁違いの本塁打が飛び交うこととなります。これまでの大会における合計本塁打記録は26本でしたが、今大会ではその倍近い47本もの本塁打が記録され、大会新記録を樹立しました。

中でも注目を集めたのが、日本通運の内野手、伊藤由紀夫選手です。彼は大会期間中に驚異的なペースで本塁打を量産し、1大会における個人最多本塁打の大会記録（6本）を樹立しました。この記録は現在も破られていません。さらに、彼は1回戦から4試合連続で本塁打を放ち、個人連続試合本塁打の新記録（4試合）も同時に達成しました。伊藤選手の活躍に牽引された日本通運は、快進撃を見せて決勝まで駒を進めました。

決勝戦は、前年優勝の住友金属と、伊藤選手を擁する日本通運の顔合わせとなりました。試合は投手戦となり、住友金属が高橋修二投手、日本通運が清水雅彦投手が先発しました。試合中には日本通運の柿沼章文選手と住友金属の筒井大助選手がそれぞれ本塁打を放ちましたが、最終的には住友金属が貫禄を見せ、日本通運を破り勝利を収めました。この結果、住友金属は大会史上4回目の優勝、そして大会2連覇を達成しました。

大会終了後には、個人の活躍を称える表彰が行われました。最も活躍した選手に贈られる最高殊勲選手賞には、住友金属を優勝に導いたエース、高橋修二投手が選ばれました。高橋投手は前年に続く2年連続、そして自身3度目の受賞という快挙を成し遂げました。敢闘賞には、歴史的な本塁打記録を樹立した日本通運の伊藤由紀夫選手が、打撃賞には松下電器の外野手、平岡靖彦選手がそれぞれ選ばれました。その他、投打の各ポジションから多数の選手が大会優秀選手として選出され、その年の社会人野球界を彩った名選手たちが顔を揃えました。

この大会では、個人・チーム双方でいくつかの特筆すべき記録が生まれました。先述の伊藤由紀夫選手による個人最多本塁打（6本）および個人連続試合本塁打（4試合）の記録のほか、チーム記録としては、日本楽器が2回戦の対富士重工業戦で、神戸製鋼が2回戦の対電電中国戦でそれぞれ毎回安打を達成しました。また、1試合におけるチーム最多犠打のタイ記録（6）が2試合で生まれました。電電東海が2回戦の対新日鉄堺戦で記録し、さらに決勝戦でも住友金属が対日本通運戦で同記録を達成しました。これらの記録は、金属バットがもたらした打撃面の変化や、緻密なチーム戦術の一端を示すものと言えるでしょう。

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