第110飛行隊 (イスラエル空軍)

イスラエル空軍 第110飛行隊：北の騎士たち

イスラエル航空宇宙軍の精鋭部隊、第110飛行隊、通称「ナイツ・オブ・ザ・ノース」。その輝かしい歴史と数々の戦績を紐解きます。

創設と初期

1953年、第110飛行隊はハツォール空軍基地で産声を上げました。当初は、約20機のデ・ハビランド モスキート FB.6と少数のT.3を装備する戦闘機部隊として編成。銀色の機体に黒色のスピナーとラダーが特徴的なモスキートは、第110飛行隊の象徴でした。

1955年には、イギリス海軍から放出された14機のモスキート TR.33が追加配備され、イスラエルで唯一モスキートTR.33を運用する飛行隊となりました。この頃から、機体にはダークブルー/ブラウンの迷彩塗装が施され、より実戦的な姿へと変化を遂げました。

第二次中東戦争とジェット化

1956年の第二次中東戦争では、旧式化しつつあったモスキートを駆り、エジプト軍への地上攻撃を敢行。老兵はなおも、その存在感を示しました。

1957年から1958年にかけて、モスキートは退役し、フランス製の双発ジェット戦闘機ボートゥールIIAとその爆撃機型IIBが後継機として配備されました。ラマト・ダヴィド空軍基地を拠点とし、1963年からは夜間戦闘機型IINも運用。1962年にはグロスター ミーティア T.7を練習機として運用し、1964年には戦闘機型のF.8と偵察機型のFR.9が加わりました。

第三次・第四次中東戦争

1967年の第三次中東戦争では、ボートゥールIIAとIINが実戦投入され、シリア上空で1機が撃墜されるも、翌日にはイラク軍のハンター戦闘機を撃墜する戦果を挙げました。

1970年から1971年には、ボートゥールとミーティアが退役し、A-4Hスカイホーク攻撃機を装備。1973年の第四次中東戦争では、防空網により損害を受けましたが、アメリカからのA-4E供与により戦力を維持。1977年頃にはA-4Nに更新されました。

F-16時代とバビロン作戦

1981年、第110飛行隊はA-4Nスカイホークを他部隊に移管し、新型のF-16A/B Netz戦闘機を導入。イスラエル空軍で2番目にF-16A/Bを運用する飛行隊となり、エースパイロットのアミル・ナフミが飛行隊長に就任しました。

同年6月7日、第110飛行隊の4機のF-16は、イラクの原子炉への攻撃作戦（バビロン作戦）に参加。歴史的な任務の一翼を担いました。

バビロン作戦から数週間後の7月14日には、レバノン上空でシリア空軍のMiG-21と空中戦が発生。第110飛行隊長のナフミがMiG-21を撃墜し、F-16による世界初の空戦撃墜記録を打ち立てました。

1982年の第一次レバノン戦争では、合計23機のシリア空軍機を撃墜。飛行隊長のナフミは6機を撃墜し、総撃墜数14機というイスラエル空軍トップエースの一人となりました。

F-16Cへの更新と解隊

1987年頃、第110飛行隊のF-16A/Bは新型のF-16C Block30 Barakに更新され、再びイスラエル空軍で2番目にF-16Cを運用する飛行隊となりました。運用を終えたF-16A/Bは、第140飛行隊および第253飛行隊に移管されました。1991年には複座型F-16D Block30も追加配備されています。

2017年2月末、第110飛行隊は惜しまれつつも活動を停止。運用していたF-16C/Dは、アグレッサー部隊である第115飛行隊に移管されました。

終わりに

第110飛行隊は、様々な機種を乗りこなし、数々の戦火をくぐり抜けてきた歴戦の勇士でした。その伝統と精神は、次世代のパイロットたちに受け継がれていくことでしょう。

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