第12回社会人野球日本選手権大会

第12回社会人野球日本選手権大会 1985

1985年（昭和60年）10月20日から28日にかけて、大阪球場にて第12回社会人野球日本選手権大会が開催されました。この大会は、その年の社会人野球界の締めくくりとして、全国から強豪チームが集結し、熱戦が繰り広げられました。

大会概要

本大会は、いくつかの注目すべき点がありました。夏の都市対抗野球大会を制した東芝が、史上初の夏秋連覇を目指して参戦。順調に勝ち進み、期待が高まりましたが、惜しくも準決勝で敗退し、その偉業達成はなりませんでした。

また、この時期は日本電信電話（NTT）の発足に伴い、新たな体制となったチームが複数出場。新生NTTチームの中から4チームが本戦に進出し、特にNTT東北は記念すべき初出場を果たしました。

激戦を勝ち抜き、最終的に栄冠に輝いたのは本田技研です。チームにとって、この大会での優勝は初めてのことでした。この初優勝の最大の原動力となったのは、エースの伊東昭光投手です。同年のロス五輪代表メンバーでもあった伊東投手は、大会を通して圧倒的な投球を見せ、4試合に完投。防御率0.79という驚異的な数字を記録し、大会の最優秀選手賞（最高殊勲選手賞）に選ばれました。

この第12回大会からは、打撃部門の表彰が変更され、打撃賞と首位打者賞が独立して表彰されるようになった点も特徴です。

激闘の軌跡

大会は各予選を勝ち抜いたチームによるトーナメント方式で争われました。前評判の高かった東芝が準決勝で姿を消す波乱もありましたが、最終的に決勝の舞台へ駒を進めたのは、初優勝を目指す本田技研と、強豪の日本楽器でした。

10月28日に行われた決勝戦は、投手戦の様相を呈しました。本田技研のマウンドには大会の顔となった伊東昭光投手、対する日本楽器は高田博久投手が先発。試合は本田技研が優位に進め、山崎選手、広瀬選手に本塁打が飛び出すなど、打線も機能しました。伊東投手が日本楽器打線を抑え込み、本田技研が勝利。チーム創設以来初の日本一に輝きました。決勝で敗れた日本楽器の高田投手は、その健闘が称えられ敢闘賞を受賞しています。

輝いた選手たち

大会では多くの選手が印象的な活躍を見せました。主要な表彰選手は以下の通りです。

最高殊勲選手賞: 伊東昭光（投手：本田技研）
敢闘賞: 高田博久（投手：日本楽器）
打撃賞: 山越吉洋（内野手：本田技研）
首位打者賞: 雨堤浩久（外野手：本田技研） - 13打数6安打、打率.462を記録。

また、大会の優秀選手として、ポジション別に以下の選手たちが選出されました。

投手: 伊東昭光（本田技研）、菊池総（東芝）、高田博久（日本楽器）、長渡宏之（神戸製鋼）、高橋一彦（日本石油）、山田武史（本田技研熊本）
捕手: 安斉定男（東芝）、佐藤正則（日本楽器）、対馬昭男（日本石油）、大本二郎（松下電器）
内野手: 入内島保（本田技研）、広瀬哲朗（本田技研）、山越吉洋（本田技研）、村瀬耕次（河合楽器）、山本秀樹（日本楽器）、宮崎剛（東芝）、中村好治（神戸製鋼）、広岡資生（松下電器）、上村真弘（川崎製鉄神戸）
外野手: 梁原修志（東芝）、中村和彦（日本楽器）、高野清秀（神戸製鋼）、荻原俊文（本田技研）、荒井幸雄（日本石油）

記憶に残る記録

第12回大会では、いくつかの特筆すべき記録も樹立されました。

毎回安打: 松下電器が2回戦の三菱自動車川崎戦で、本田技研が準々決勝の川崎製鉄神戸戦（6回コールド）でそれぞれ達成しました。
1試合チーム最多二塁打: 神戸製鋼が1回戦のNTT東海戦で7本を記録し、これは大会タイ記録でした。
先発全員安打全員得点: 日本楽器が1回戦の大分鉄道管理局戦で記録しました。
連続試合完封: 本田技研の伊東昭光投手が準々決勝と準決勝で2試合連続完封を達成し、これは大会タイ記録となりました。

本田技研の初優勝と伊東投手の圧倒的な活躍、そして数々の記録が生まれた1985年の社会人野球日本選手権は、多くのファンの記憶に残る大会となりました。

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