第123飛行隊 (イスラエル空軍)

イスラエル空軍第123飛行隊：砂漠の鳥の歴史

イスラエル空軍第123飛行隊は、中型輸送ヘリコプターであるS-70A-50/UH-60Lを運用する重要な部隊です。通称「デザートバード・スコードロン」として知られ、かつてはベル社製ヘリコプターを運用していたことから「サウザン・ベルズ・スコードロン」とも呼ばれていました。飛行隊のエンブレムは、ベル社の頭文字「B」をヘリコプターの風防に見立てたデザインが特徴的です。

黎明期とベル47の導入

第123飛行隊は、イスラエル空軍におけるヘリコプター運用の先駆けとして編成された第124飛行隊の経験を基に誕生しました。1965年、第124飛行隊長であったウリ・ヤロムは、ヘリコプターの市場調査のためフランスに派遣され、ベル社との関係を築き、ベル47の購入契約を取り付けました。同年9月、イスラエル空軍は13機のベル47Gを導入し、これを運用するためにテルノフ空軍基地に第123飛行隊が編成されました。編成当初の人員は第124飛行隊からの異動が中心でした。

中東戦争における活動

1967年の第三次中東戦争では、第123飛行隊のベル47Gは、第124飛行隊のシコルスキーS-58と共に作戦に投入されました。S-58が主に空挺部隊の輸送に使用されたのに対し、小型のベル47Gは連絡や観測任務に活用されました。1968年頃には、第124飛行隊のS-58と第123飛行隊のベル47が退役し、その後継としてアメリカ製のベル 205が1968年から1969年にかけて配備されました。

ハツェリム基地への移転とツインヒューイの導入

1972年頃、第123飛行隊は拠点を南部のハツェリム空軍基地に移転しました。これにより、第124飛行隊は主に北部、第123飛行隊は南部を担当することになりました。1973年の第四次中東戦争にはベル205を装備して参加しましたが、この戦争でベル205の運用上の問題点が浮き彫りとなりました。そのため、1975年頃から第124飛行隊と第123飛行隊のベル205は、双発のベル212「ツインヒューイ」への更新が始まりました。この頃、第124飛行隊はテルノフ空軍基地からパルマヒム空軍基地へと拠点を移しています。

UH-60ブラックホークの導入と再編

1983年には、アメリカ製の新型輸送ヘリコプターUH-60「ブラックホーク」の評価が行われ、イスラエル空軍はツインヒューイの後継機種として最適と判断しましたが、予算の関係で導入は遅れました。1994年8月には、アメリカ陸軍の余剰となった中古のUH-60A 10機がイスラエルに供与され、「ヤンシャフ」（ヘブライ語でフクロウの意）と名付けられました。これらの機体は電子機器の改修を経て、第124飛行隊に配備されました。これに伴い、第124飛行隊のツインヒューイの一部が第123飛行隊に移管されました。

1997年、イスラエル空軍はシコルスキー社との間でS-70A-50 15機の導入契約を締結しました。S-70A-50はアメリカ陸軍向けのUH-60L相当の機体で、イスラエル軍向けの電子機器が搭載されています。最初の5機は1997年5月にイスラエルに空輸され、7月頃に組み立てが完了し、第124飛行隊に配備されました。この追加配備により、第124飛行隊に残っていたツインヒューイは全て第123飛行隊に移管されました。初期に導入されたUH-60AもS-70A-50相当に改修されました。この再編により、第124飛行隊の運用機はS-70A-50/UH-60Lに統一され、第123飛行隊はイスラエル軍唯一のツインヒューイ飛行隊となりました。

現在の体制

2002年には、追加発注されたS-70A-50（24～35機）が導入され、第123飛行隊に配備されたことで、ベル212ツインヒューイは退役しました。2015年には、第123飛行隊はハツェリム空軍基地からパルマヒム空軍基地に移転し、UH-60系列の集中運用体制が確立されました。

まとめ

イスラエル空軍第123飛行隊は、黎明期のベル47から始まり、ベル205、ベル212ツインヒューイ、そして現在のUH-60ブラックホークへと、運用機材を変化させてきました。この変遷は、イスラエル空軍のヘリコプター運用における技術革新と、中東情勢に対応するための装備近代化の歴史を反映しています。現在はUH-60ブラックホークを主力とし、イスラエル空軍の重要な戦力として活躍しています。

参考資料

aeroflight.co.uk 123sqn