第14
師管(だいじゅうよんしかん)は、日本の旧陸軍に存在した管区の一つです。その歴史は二つの時期に分かれます。最初は
1873年(明治6年)から
1885年(明治18年)にかけての
鎮台制下、次に
1907年(明治40年)から
1940年(昭和15年)にかけての
師団制下です。全国に設けられていた14または18の
師管の一つとして位置づけられましたが、制度と管轄区域はそれぞれの時期で大きく異なっていました。
鎮台制下の
師管は、
1873年1月に
鎮台条例が改定された際に全国に配置されました。これは、各地に
鎮台が設置されてから2年後のことです。第14
師管は、当時の
熊本鎮台が管轄する第6軍管の下に設けられた二つの
師管の一つでした。現在の北九州市にあった小倉に営所が置かれていたため、「小倉
師管」とも呼ばれていました。管轄区域は主に九州北部を占め、小倉のほか、福岡、長崎、
対馬にも分営が設けられていましたが、具体的な管区の境界は当時の条例で明確に示されていませんでした。
第6軍管(
1873年1月~
1885年5月)は、第13
師管(熊本
師管)と第14
師管(小倉
師管)から構成されていました。
この
鎮台制下の第14
師管は、
1885年5月の
鎮台条例改定に伴い廃止されました。この改定により、全国の軍管および
師管の配置が変更され、
師管の数は12に削減されました。九州北部地域は、新たに設置された第12
師管の管轄となりました。
師団制における
師管は、対応する番号の
師団と密接な関係を持っていました。第14
師管の場合、
栃木県の
宇都宮市に司令部を置く第14
師団が管轄しました。この
師管の主な役割の一つは、第14
師団が必要とする兵員を徴集することでした。原則として、第14
師管に
戸籍を持つ男子が徴集され、第14
師団に配属されました。
しかし、この原則にはいくつかの例外がありました。例えば、独自の
師管を持たない近衛
師団や、人口の少ない北海道に置かれた第7
師団、さらには朝鮮に置かれた
師団などへも、全国の
師管から兵員が送られました。具体的な例として、第14
師管から徴集された兵員は、第14
師団だけでなく、近衛
師団、第7
師団、朝鮮の
師団などにも配賦されていました。
師管はまた、管轄する
師団がその地域の防衛や治安維持に責任を負う範囲でもありましたが、この時代には国内での大規模な反乱の可能性や外国軍による日本本土への上陸攻撃は現実的ではないと考えられていました。
師団制下の区域変遷
師団制下の第14
師管は、
1907年9月に陸軍の
師団増設に伴う改定によって設けられました。設置当初の管轄区域は、
茨城県、
栃木県、
群馬県の全域と、
埼玉県西部の5郡でした。この期間(
1907年9月~
1924年5月6日)は、管内に水戸、宇都宮、高崎、熊谷の各連隊区が含まれていました。
1924年5月7日、陸軍管区表が改定されましたが、管轄区域に変更はなく、管内には水戸、宇都宮、高崎、熊谷の各連隊区が維持されました(
1924年5月7日~1925年4月30日)。
大きな変更は1925年5月1日に施行された
宇垣軍縮に伴う改定でした。
師団削減の影響で
師管の区割りが見直され、第14
師管は
埼玉県の部分を第1
師管に譲る一方、それまで他の
師管に分かれていた
長野県全域をまとめて管轄することになりました。この新しい区域(
茨城県、
栃木県、
群馬県、
長野県)は、
1940年に
宇都宮師管に改称されるまで維持され、さらに
宇都宮師管が1941年(昭和16年)に
長野県を金沢
師管へ移管するまで続きました。この期間(1925年5月1日~
1940年7月31日)の管内には、水戸、宇都宮、高崎、松本の各連隊区が置かれていました。
1940年8月1日、第14
師団を含む常設
師団が満州へ移転することになったため、陸軍管区表が改定されました。この改定により、
師管の名称に地名が冠されることになり、第14
師管は「
宇都宮師管」と改称されました。第14
師団に代わって
師管の管轄は新設の第51
師団が担うことになりました。
宇都宮師管はその後、1945年(昭和20年)に「
宇都宮師管区」と改称され、同年8月の太平洋戦争終結まで存続しました。