第158師団 (日本軍)

第158師団：幻の満洲決戦師団

第158師団は、大日本帝国陸軍が編成を命じた最後の師団の一つです。1945年8月、太平洋戦争末期の混乱の中、満洲において編成が開始されましたが、ソ連対日参戦によって実戦を経験することなく終戦を迎えることとなりました。

編成の背景

1945年に入り、関東軍は南方戦線への兵力転用によって戦力が大幅に低下していました。しかし、満洲には約40万人の居留邦人と在郷軍人が存在し、これらを「根こそぎ動員」することで兵力を増強しようとしました。さらに、中国戦線から4個歩兵師団を呼び戻し、戦車200輌、航空機200機、火砲1000門をかき集め、一見すると74万人の大兵力を擁しているように見えました。

しかし、その実態は深刻でした。兵員の半数以上が訓練不足で、ソ連との中立条約を過信していた関東軍首脳部の混乱、そして何よりも深刻な物資不足が戦力を著しく低下させていました。特に深刻だったのは、砲弾が約1200発程度しかなく、航空部隊もほとんどが実戦経験がないという状況でした。小銃が行き渡らない兵士も10万人以上いたとされ、実質的な戦力は30万名程度であったと推測されています。

このような状況下で編成が命じられた第158師団は、他の部隊とは異なり、満洲に所在する教育訓練を終えた下士官候補隊や幹部候補生教育隊を基幹としていました。これは、他の部隊が「根こそぎ動員」された兵士で構成されていたのとは対照的です。しかし、その編成命令が出された1945年8月10日の前日にはソ連が対日参戦を開始しており、師団は編成を完了させることができないまま、新京（現在の長春）で終戦を迎えたのです。

師団の概要

第158師団は、実戦を経験することなく終戦を迎えたため、歴代の師団長は未就任となっています。

最終所属部隊は以下の通りです。

歩兵第389連隊（満洲）
歩兵第390連隊（満洲）
歩兵第391連隊（満洲）

これらの部隊は、実戦を経験することなく終戦を迎えたため、具体的な戦歴は残されていません。

関連事項

大日本帝国陸軍師団一覧

参考文献

秦郁彦編『日本陸海軍総合事典』第2版、東京大学出版会、2005年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
* 『別冊歴史読本 戦記シリーズNo.32 太平洋戦争師団戦史』、新人物往来社、1996年。

第158師団は、帝国陸軍が最後に編成を試みた師団でありながら、その実戦での活躍を見ることはありませんでした。しかし、その編成の背景には、当時の日本の切迫した状況と、関東軍の混乱が色濃く反映されています。この師団の存在は、太平洋戦争末期の日本の姿を今に伝える貴重な歴史の一部と言えるでしょう。

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