第20回社会人野球日本選手権大会

1993年（平成5年）の秋、社会人野球の頂点を争う祭典、記念すべき第20回社会人野球日本選手権大会が、10月10日から10月17日までの期間、グリーンスタジアム神戸を舞台に開催されました。

大会を巡る動向

この年の夏、都市対抗野球で見事な戦いぶりを見せ、通算7度目の黒獅子旗を獲得した日本石油でしたが、今大会では思わぬ苦戦を強いられました。勢いそのままに秋のタイトルも狙うかに思われましたが、2回戦でNTT関西の前に完敗を喫し、早々と大会を去ることとなりました。また、前回の選手権大会で決勝まで勝ち進み、激闘を演じた東芝とプリンスホテルの両チームも、今回は予選段階で姿を消す結果となり、波乱含みの大会を予感させました。

一方、今大会が夏の都市対抗を含め、初めての全国大会出場となったチームもありました。JA岩手県経済連とニチエーの2チームは、歴史的な一歩をグリーンスタジアム神戸のグラウンドに記しました。また、三菱重工横浜は、社会人野球日本選手権には初出場を果たしました。継続的な活躍を見せるチームとしては、四国地区を代表する四国銀行が挙げられます。前年のNTT四国に続き、四国銀行も10年連続となる本大会出場を達成し、その安定した実力を見せつけました。

大会の経過と優勝

トーナメントを勝ち上がり、決勝へと駒を進めたのは、例年秋季大会で好成績を収めている強豪、住友金属でした。住友金属は、決勝戦でもその実力を遺憾なく発揮し、相手チームを退けて勝利を収めました。この優勝は、住友金属にとって4年ぶり、そしてチームとして通算6回目の快挙達成となりました。また、住友金属はこれにより、選手権大会の決勝戦における連勝記録をさらに更新しました。

個人表彰

大会を通じて最も活躍した選手に贈られる最高殊勲選手賞には、優勝チームである住友金属のエース、尾山敦投手が選ばれました。尾山投手は、実は4年前の大会でも同賞を受賞しており、二度目の栄誉に輝きました。惜しくも優勝には届きませんでしたが、チームを牽引する活躍を見せた選手に贈られる敢闘賞は、日産自動車の川尻哲郎投手が受賞しました。打撃部門では、最も優れた打撃成績を残した選手に贈られる打撃賞を住友金属の川畑伸一郎内野手が獲得。そして、規定打席に達した選手の中で最高の打率を記録した首位打者賞には、日立製作所の恒吉成樹内野手が輝きました。恒吉選手は13打数で7安打を放ち、打率.538という高打率をマークしました。

大会優秀選手

今大会で特に活躍が認められた選手たちが、ポジション別に大会優秀選手として表彰されました。投手では、MVPにも選ばれた住友金属の尾山敦に加え、日本通運の黒川紀章が選出されました。捕手は、日本通運の川崎義文と日産自動車の黒須隆が受賞。一塁手には住友金属の川畑伸一郎とNTT東北の三瓶仁が選ばれています。二塁手は住友金属の松本尚樹が受賞。三塁手には、首位打者である日立製作所の恒吉成樹と、日産自動車の渡辺等が名を連ねました。遊撃手部門では、日産自動車の天瀬和男と住友金属の三宅秀二が選出されました。外野手は、日立製作所の徳原康晴、住友金属の中西保友、日本通運の井出竜也（後にプロ入り）、NTT東北の夷塚博、そして大昭和製紙北海道の道原孝博の5名が受賞。指名打者としては、日本通運の難波貴司が優秀選手に選ばれています。

特筆すべき記録

この大会では、いくつかの興味深い記録も生まれました。日立製作所は、1回戦の新日本製鐵広畑戦において、攻撃イニング全てで安打を記録する「毎回安打」と、出場した全員が安打を放つ「全員安打」という珍しい記録を同時に達成しました。また、1イニングでチームが三塁打を2本放つという記録も、今大会で複数回記録されました。三菱重工長崎が2回戦の住友金属戦で、日本通運が準々決勝のNTT関西戦でそれぞれ達成しており、これは大会タイ記録となりました。

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