第20回都市対抗野球大会

1949年（昭和24年）の夏、日本の社会人野球界にとって新たな幕開けとなる大会が、後楽園球場を舞台に繰り広げられました。それが第20回都市対抗野球大会です。この大会は、同年2月に発足したばかりの日本社会人野球協会（現在の日本野球連盟）と毎日新聞社による初めての共催大会として、歴史にその名を刻んでいます。

全国から選ばれた20チームが集結し、熱戦を展開しました。この中には、翌年にはプロ野球界へと活躍の場を移すことになる西日本鉄道（福岡市）や大洋漁業（下関市）といった実力チームも含まれており、当時の社会人野球のレベルの高さを物語っています。

今大会は、例年にない打撃戦が多く見られたのが特徴です。各チームの強力な打線が火を吹き、スタンドへ放り込まれる本塁打が続出しました。その数は、第18回大会で記録された従来の大会通算本塁打記録12本を大きく塗り替える、実に27本にも達しました。これは、戦後復興が進む中で野球そのものが大きく変化しつつあった時代背景を映し出しているとも言えるでしょう。

多くのアーチが飛び交う中、栄えある黒獅子旗を手にしたのは、別府市代表の星野組でした。星野組は前年の第19回大会で惜しくも準優勝に終わり、初の栄冠まであと一歩届きませんでした。その悔しさを胸に臨んだ今大会で見事雪辱を果たし、創部以来初の優勝を飾りました。

星野組の快進撃を支えた最大の立役者は、エースの荒巻淳投手です。当時すでに「和製火の玉投手」と称されるほどの速球と気迫あふれるピッチングで注目を集めていた荒巻投手は、この大会でチームが出場した全5試合全てに登板するという驚異的なタフネスを見せました。しかも、全登板で奪われた失点はわずかに合計6点。圧倒的な投球内容でチームを勝利に導き続けました。その目覚ましい活躍が評価され、大会を通じて最も活躍した選手に贈られる最高殊勲選手賞、すなわち橋戸賞を受賞しました。

大会は8月7日に開幕し、トーナメント方式で進行しました。激戦を勝ち抜いたチームは、1回戦、2回戦、準々決勝、準決勝と駒を進めます。準決勝では、星野組と大昭和製紙（吉原市）、そして豊岡物産（八幡市）と全藤倉（東京都）がそれぞれ対戦し、星野組と大昭和製紙が決勝へ、豊岡物産と全藤倉が3位決定戦へと進みました。

大会最終日の8月14日には、まず3位決定戦が行われました。豊岡物産対全藤倉の対戦は、全藤倉が勝利を収め、3位の座を獲得しました。この試合では全藤倉の米久保投手が勝利投手となり、豊岡物産の米久保投手（同姓同名）が敗戦投手となりました。また、全藤倉からは米久保選手が本塁打を放っています。

そして迎えた決勝戦は、別府市・星野組と吉原市・大昭和製紙の顔合わせとなりました。星野組はエース荒巻淳投手が、大昭和製紙は小川投手が先発しました。白熱した投手戦、あるいは乱打戦となったかは定かではありませんが、結果として星野組が勝利を収め、初の黒獅子旗を手にしました。勝利投手は星野組の荒巻投手、敗戦投手は大昭和製紙の小川投手です。また、大昭和製紙の大道信敏選手が決勝戦で本塁打を記録しています。

個人記録では、星野組の荒巻淳投手が前述の通り橋戸賞を受賞。一方、久慈賞（敢闘賞）には、決勝で本塁打を放った大昭和製紙の大道信敏遊撃手が選ばれました。

第20回大会は、社会人野球の新たな体制下で、打撃戦の魅力と、それを凌駕する荒巻投手の圧倒的なピッチングが融合した、記憶に残る大会となりました。前年の雪辱を果たした星野組の初優勝は、別府市に大きな喜びをもたらしました。

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