第21回カンヌ国際映画祭

第21回カンヌ国際映画祭

第21回カンヌ国際映画祭は、1968年5月10日から24日にかけて開催が計画されていた。しかし、5月19日に発生した「カンヌ国際映画祭粉砕事件」により、途中で中止となり、予定されていた各賞の選出は行われなかった。この映画祭の中止は、その後の映画界や文化の在り方に多大な影響を与える結果となった。

審査員と上映予定作品

映画祭の審査員には、フランスの作家アンドレ・シャンソンが審査委員長を務め、ロマン・ポランスキーやテレンス・ヤングなど、名だたる監督や作家が参加していた。また、競争部門に出品予定だった作品は、アルファベット順に並べられていたが、最終的に賞は授与されなかった。

特別招待作品としては、アメリカの『風と共に去りぬ』やフランスの『白い恋人たち』、さらにはフェデリコ・フェリーニとルイ・マルによる作品などが予定されていたが、どれも上映されることはなかった。

粉砕事件の背景

本祭の開催9日目、即ち5月19日にジャン＝リュック・ゴダールがコンペティション部門に出品されていたカルロス・サウラの作品の上映を中止させるために会場に現れた。この行動は、彼と同じくヌーベル・バーグ運動の一員であったフランソワ・トリュフォーと共に、フランス国内で広がっていた学生と労働者によるストライキ運動に連帯する形で行われた。

彼らは、警察の弾圧や政府、また映画業界の構造に対する抗議の意を込めてカンヌ映画祭の中止を呼びかけ、クロード・ルルーシュやジャン=ピエール・レオなどの映画人も参加した。審査員であったモニカ・ヴィッティ、テレンス・ヤング、ロマン・ポランスキー、ルイ・マルも彼らの訴えに賛同し、上映と審査の中止を求めた。

この圧力により、映画祭事務局は同日中に中止を決定し、ファーブル・ル・ブレがその旨を発表した。これにより、フランスの映画人たちの行動は映画祭を実質的に「粉砕」する結果となった。

その後の影響

この事件はその後、パリを中心に労働者と学生によるゼネストへつながり、いわゆる「五月革命」として歴史に刻まれた。映画祭の開催に際してこのような形で中止を余儀なくされたことは、映画界における官僚主義への反対運動を引き起こし、それまでの映画製作や上映の在り方を見直す契機となった。

その影響を受け、カンヌ映画祭と並行して「監督週間（Director’s Fortnight）」が設けられることとなった。このプロジェクトは、映画製作者たちがより自由に作品を発表できるようになることを目指して設立されたものである。

この「監督週間」では、選ばれなかった監督たちが参加し、自らの作品を自主的に上映することができた。審査員や賞はなく、唯一の観客は映画ファンという形で、よりオープンな映画祭の実現を試みたのである。これにより、映画祭の枠組みを超えた作品の発表の場が提供され、映画界全体に新たな風が吹き込まれることになった。

以上が、第21回カンヌ国際映画祭の概要とそれに伴う重大な出来事の詳細である。この事件は単なる映画祭の中止に留まらず、フランス社会全体に波及した歴史的な出来事であり、その後の映画文化に多大な影響を与えた。

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