第24回全国中等学校優勝野球大会

時代を映す舞台：第24回全国中等学校優勝野球大会

1938年（昭和13年）、日本の社会が戦時色を強めていく中で、第24回全国中等学校優勝野球大会が開催されました。この夏の高校野球の祭典は、8月13日から8月21日までの9日間にわたり、兵庫県武庫郡鳴尾村（現在の西宮市）にある阪神甲子園球場で行われました。

戦時下の異例な雰囲気

大会が開幕した8月13日は、第二次上海事変の発生からちょうど1年という記念日でした。球場内は、その時代の空気をそのまま映し出しており、応援席には「堅忍持久」「心身鍛錬」といった戦時下のスローガンが掲げられました。開会式では、参加者全員で愛国行進曲を歌い、進軍ラッパの合図で大会が開始されるなど、スポーツイベントとしては異例なほど軍事的な色が濃い雰囲気でした。選手宣誓の際にも、「我々は武士道の精神に則り正々堂々と試合せんことを期す」という力強い言葉が、整列した全選手によって一句一句唱和されるという厳粛な形式がとられました。これは、当時の野球が単なるスポーツ競技に留まらず、戦時下の国家体制における精神教育や戦意高揚の一環として位置づけられていたことを物語っています。

大会の進行と注目のプレー

全国から予選を勝ち抜いた代表校による熱戦が繰り広げられました。トーナメント方式で進行する中、いくつかの印象的な試合や出来事がありました。特に1回戦では、大分商業高校の浦野隆夫投手が台北一中を相手にノーヒットノーランを達成する素晴らしいピッチングを見せ、大会に華を添えました。

準決勝のドラマ、そして決勝へ

大会も終盤に差し掛かり、準決勝では平安中学校が高崎商業高校を破って決勝進出を決めました。もう一方の準決勝では、岐阜商業高校と甲陽中学校が対戦しましたが、1回裏終了時に降雨のため無効試合となり、翌日に再試合が行われるというアクシデントがありました。再試合を制した岐阜商業が、平安中学校との決勝戦に駒を進めました。

歴史に残る決勝戦

決勝戦は、平安中学校と岐阜商業高校の顔合わせとなりました。試合は手に汗握る展開となり、最後の瞬間まで勝敗の行方が分からない熱戦となりました。最終的に、平安中学校が劇的な逆転サヨナラ勝ちを収め、見事優勝を果たしました。これは、甲子園大会史上初めてとなる逆転サヨナラでの優勝であり、歴史に残る一戦となりました。平安中学校にとって、困難な時代背景の中での栄光の瞬間でした。

試合結果（主要ラウンド）

以下に、主要な試合の結果を記します。

1回戦
高崎商 3 - 1 北海中
下関商 7 - 1 日大三中
大分商 4 - 0 台北一中（浦野隆夫がノーヒットノーラン）
仁川商 3 - 2 天津商
坂出商 2 - 0 掛川中
平安中 6x - 5 海草中

2回戦
甲陽中 10 - 0 山形中
岐阜商 5 - 0 松本商
京阪商 2 - 1 福岡工
鳥取一中 3 - 0 青森師範
浅野中 5 - 3 敦賀商
高崎商 5 - 0 坂出商
下関商 6 - 1 仁川商
平安中 4 - 0 大分商

準々決勝
高崎商 11 - 4 京阪商
平安中 1 - 0 浅野中
岐阜商 5 - 0 下関商
甲陽中 3 - 0 鳥取一中

準決勝
平安中 7 - 2 高崎商
岐阜商 3 - 1 甲陽中（再試合）

第24回大会は、野球の技術や選手の情熱だけでなく、当時の社会情勢が強く反映された、歴史的に特異な位置づけにある大会と言えるでしょう。多くの球児たちが、この時代を生き抜く中で白球を追いかけました。

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