第27回都市対抗野球大会

第27回都市対抗野球大会

1956年夏、都市対抗野球大会は記念すべき第27回を迎えました。この大会は、7月28日から8月5日までの9日間、野球の聖地・後楽園球場を舞台に開催されました。

大会の概要と主な変更点

この年、大会にはいくつかの重要な変更が導入されました。特筆すべきは、前回優勝チームに与えられていた予選免除の特権が廃止されたことです。これにより、前回王者である全鐘紡も予選からの出場を余儀なくされました。一方で、本大会に出場できるチーム数は、これまで通り25チームで固定されました。

また、この大会は、都市対抗野球の隆盛に大きく貢献した小野三千麿氏が同年2月に逝去された後、初めて開催されました。彼の功績を称え、日本社会人野球協会と毎日新聞社は、今大会より、大会を特に盛り上げたチームや個人に贈られる「小野賞」を新たに創設しました。これは、社会人野球における功労者の名を冠した初めての表彰制度となりました。

熱戦の展開と優勝チーム

第27回大会は、記録的な接戦が相次ぐ大会として記憶されています。特に、13回を超える延長戦が実に4試合も繰り広げられるなど、予測不能な展開が多く見られました。激しい予選を勝ち抜いた全国の強豪都市代表25チームが、黒獅子旗を目指して熱戦を繰り広げました。

このような混戦を制し、栄えある黒獅子旗を手にしたのは、神奈川県横浜市代表の日本石油でした。4度目の出場で初めて頂点に立った彼らの戦術は、堅実な「守りの野球」でした。チームの躍進を牽引したのは、慶應義塾大学から入社した期待の右腕、藤田元司投手でした。彼は大会を通して圧巻の投球を披露し、特に予選から決勝にかけて、都市対抗野球の大会記録となる29回連続無失点という偉業を達成しました（最終的には30回3分の2イニングを投げ、わずか2自責点という好成績でした）。

藤田投手の安定したピッチングと、それを支える堅い守備陣を軸とした日本石油の戦いは、決勝で前回大会準優勝の熊谷組（埼玉県熊谷市）を破り、見事初優勝を果たしました。この優勝は、東日本のチームにとっては17年ぶり、そして戦後初めての黒獅子旗獲得という歴史的な快挙でもありました。

大会を彩った個人・チーム

今大会では、多くの選手やチームが活躍を見せました。特に印象的なプレーを見せた個人・チームには、以下の表彰が行われました。

橋戸賞（最高殊勲選手）: 藤田元司投手（日本石油）
久慈賞（敢闘賞）: 大沢貞義監督兼投手（熊谷組）
小野賞: 日立市・日本鉱業日立チーム
首位打者: 古田昌幸二塁手（熊谷組） - 打率.474（19打数9安打）
* 打撃賞: 小淵泰輔外野手（日鉄二瀬）

藤田投手は、その圧倒的な投球で橋戸賞に輝き、チームの初優勝に大きく貢献しました。また、熊谷組の大沢監督兼投手は、チームを決勝に導く手腕とプレーが評価され、久慈賞を受賞しました。新設された小野賞は、大会を盛り上げたチームとして日本鉱業日立に贈られました。熊谷組の古田選手は驚異的な打率で首位打者に、日鉄二瀬の小淵選手は打撃賞を獲得し、それぞれの存在感を示しました。

第27回大会は、制度変更と小野賞の創設という新たな試み、そして記録的な延長戦と藤田元司投手の活躍に彩られた、記憶に残る大会となりました。

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