第28回都市対抗野球大会

1957年（昭和32年）の夏、野球の聖地・後楽園球場にて、熱い戦いが繰り広げられました。これは、日本の社会人野球の最高峰たる第28回都市対抗野球大会の記録です。7月27日から8月4日まで開催されたこの大会は、いくつかの歴史的な出来事と、印象的な戦いをもって記憶されています。

大会の特色と概要

この年の大会は、例年にない波乱のうちに幕を開けました。前年度の覇者である日本石油（横浜市）が予選ラウンドでまさかの敗退を喫し、優勝チームが不在の状態で本大会を迎えることになったのです。さらに特筆すべきは、大会史上初めて、クラブチームが一つも本大会への出場権を得られなかった点です。これは、当時の社会人野球において、企業チームがその力を急速に増し、競技レベルでクラブチームを凌駕していった時代の流れを象徴する出来事であり、文字通り企業チーム全盛時代への突入を明確に示した大会となりました。

史上初の偉業：完全試合

大会の序盤、野球史に名を刻む金字塔が打ち立てられました。1回戦で行われた日鉄二瀬（八幡市）対鐘化カネカロン（高砂市）の一戦において、日鉄二瀬の若きエース、村上峻介投手が快挙を成し遂げたのです。村上投手は、相手打線を完璧に抑え込み、都市対抗野球大会史上初めてとなる完全試合を達成しました。これは、投手にとって究極の目標であり、その後の都市対抗野球の歴史においても長く語り継がれるであろう、まさに歴史的な偉業でした。村上投手のこのピッチングは、多くの野球ファンの脳裏に鮮烈な印象を残しました。

決勝戦までの道のり

激戦を勝ち抜き、栄えある黒獅子旗をかけた決勝の舞台に駒を進めたのは、東京都代表の熊谷組と、埼玉県代表の日本通運でした。

熊谷組は、この大会が7回目の出場であり、3度目の決勝進出でした。彼らの勝ち上がりは、まさに圧倒的なものでした。大会を通じて対戦した全ての試合において、相手チームに一度も得点を与えない完封勝利を続け、盤石の戦いぶりで決勝へとたどり着きました。鉄壁の投手陣を中心とした守りは、他チームを寄せ付けない強さを誇りました。

一方、日本通運は、この大会に初出場ながら、強豪チームを次々と撃破し、快進撃を続けて決勝進出を果たしました。フレッシュな勢いと粘り強さで、観衆を魅了する戦いを展開しました。

決勝戦と「完全優勝」

1957年 8月4日に行われた決勝戦は、熊谷組の鉄壁の守備陣と日本通運の勢いがぶつかり合う注目の一戦となりました。

試合は、熊谷組の先発、島津四郎投手が日本通運打線を零封。味方打線も着実に得点を奪い、熊谷組が日本通運を破って優勝を飾りました。敗れはしましたが、日本通運の堀本律雄投手も力投を見せました。

熊谷組の優勝は、大会を通じて戦った全5試合すべてを完封勝利という、都市対抗野球史上他に例を見ない驚異的な内容でした。これは「完全優勝」と称されるにふさわしい、歴史に残る偉業であり、熊谷組はこの大会で初めて黒獅子旗を手にしました。

3位決定戦

決勝戦に先立ち行われた3位決定戦では、門司市代表の西鉄と大阪市代表の松下電器が対戦。松下電器が勝利し、3位となりました。

西鉄 000 000 000｜0
松下電器 000 000 21X｜3
勝：山地敗：太田本：古市（松下）

大会を彩った選手たち

この大会で活躍した選手たちには、以下の表彰が与えられました。

橋戸賞（最高殊勲選手）: 島津四郎投手（熊谷組）
優勝チームのエースとして、全試合完封優勝の立役者となりました。
久慈賞（敢闘賞）: 堀本律雄投手（日本通運）
初出場チームを決勝まで導く活躍を見せました。
小野賞（大会功労者）: 村上峻介投手（日鉄二瀬）
都市対抗野球史上初の完全試合達成という偉業が称えられました。

第28回都市対抗野球大会は、企業チーム時代の到来を告げ、史上初の完全試合、そして全試合完封での「完全優勝」という、数々の歴史的な出来事が凝縮された、忘れられない大会として記憶に残る大会となりました。

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