第29期順位戦

第29期順位戦と第34期名人戦

将棋界における最も権威あるタイトルである名人位。その挑戦者を決定する重要な予選棋戦が「順位戦」です。本稿では、1975年度（具体的には1974年6月から1975年3月にかけて実施された）に開催された第29期順位戦と、その結果を受けて行われた第34期名人戦について解説します。

第29期順位戦の概要

順位戦は、在籍する棋士をいくつかのクラスに分け、1年間かけてリーグ戦を行い、その成績によって次期の名人挑戦権や昇降級を決める制度です。第29期順位戦もこの方式に則って行われました。最上位のクラスであるA級からC級2組まで、各クラスで激しい戦いが繰り広げられました。

この期の順位戦における各クラスの昇級・降級（または降級点）の枠は以下の通りでした。

A級: 名人挑戦者となるのは1名のみ。一方で、下位3名が次期B級1組への降級となります。
B級1組: 上位2名がA級へ昇級できますが、下位3名はB級2組へと降級となります。
B級2組: こちらも上位2名がB級1組へ昇級。しかし、下位4名には降級点が付きます。降級点が累積すると、さらに下のクラスへの降級が決まります。
C級1組: 上位2名がB級2組への昇級権を獲得します。一方で、下位5名に降級点が付きます。
C級2組: 上位2名がC級1組へ昇級します。このクラスでも、下位4名に降級点が科せられます。

このように、順位戦は各クラスで昇級を目指す者、あるいは降級を回避しようとする者の間で、年度を通じて緊迫した戦いが展開される棋戦であり、第29期も例外ではありませんでした。この期のA級順位戦を勝ち抜いた1名が、名人挑戦者として第34期名人戦の舞台に立つことになります。

第34期名人戦七番勝負

第29期A級順位戦を制し、名人挑戦権を獲得したのは大内延介八段でした。そして、当時の名人であった中原誠との間で、最高位のタイトルをかけた七番勝負が繰り広げられました。

第34期名人戦七番勝負

対局者: 中原誠 名人 対 大内延介 八段（挑戦者）
* 結果: 中原誠名人の4勝3敗での防衛

このシリーズは両者一歩も譲らない大熱戦となり、勝敗は最終局までもつれ込むフルセットの展開となりました。最終的に中原誠名人が紙一重の差でこの激戦を制し、見事名人位の防衛に成功しました。

第29期順位戦を経て誕生した挑戦者と、当代最高の名人との間で戦われた第34期名人戦は、当時の将棋界において大きな注目を集めた一連の棋戦でした。順位戦が名人という最高峰のタイトルに連なる予選として機能し、年間を通じて棋士たちの明暗を分けるドラマを生み出す一方で、名人戦本戦では名人と挑戦者が持てる力の全てをぶつけ合う、まさに頂上決戦が繰り広げられたのです。これらの棋戦は、当時の将棋界の勢力図を示すと共に、後世に語り継がれるであろう名勝負の記録として残されています。

※ 本記述は、第29期順位戦および第34期名人戦に関する基本的な情報に基づいています。各対局の詳細や棋士個別の成績などについては、関連資料をご参照ください。

参照元: 日本将棋連盟 名人戦・順位戦

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