第31回主要国首脳会議

第31回主要国首脳会議（グレンイーグルズ・サミット）

第31回主要国首脳会議（G8サミット）は、2005年 7月6日から8日にかけて、イギリス・スコットランド地方パース・アンド・キンロスにあるグレンイーグルズ・ホテルにて開催されました。この会合は、開催地の名前から「グレンイーグルズ・サミット」あるいは「パースシャー・サミット」とも称されます。議長は、当時のイギリス首相であるトニー・ブレア氏が務めました。

主要議題と設定プロセス

主要国首脳会議では、その年の議長国が主要議題を設定するのが通例です。本会議の議長国であるイギリスは、開催に先立つ約1ヶ月間、各国事務官との事前交渉を重ね、全ての参加国の同意を得た上で議題を正式に決定しました。第31回会合においては、議長を務めるブレア首相の強いリーダーシップにより、「地球規模の気候変動」と「アフリカ諸国に対する開発支援」という、G8サミットとしては異例となる中長期的視点に立った課題が主要議題として設定されました。

主要議題以外にも、「テロ対策」、「核不拡散」、「中東情勢」といった国際社会が直面する喫緊の課題についても、首脳間で活発な意見交換が行われました。

また、会議期間中の7月7日には、G8参加国の首脳に加え、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカといった新興5カ国の首脳も招かれ、地球温暖化対策に関する意見交換が行われ、今後の対話を継続していくことが確認されました。

会議の主な成果と決定

会議の成果として発表された議長総括では、特にアフリカ開発支援の強化が強く打ち出されました。貧困に苦しむアフリカ諸国への国際援助を今後5年間で倍増し、2010年までに2004年比で250億ドルを追加的に提供することが明確に盛り込まれました。

地球温暖化対策については、開発途上国とも協力して、省エネルギー技術の導入や代替エネルギーの開発を推進するための具体的な計画として「グレンイーグルズ行動計画」が採択されました。また、世界経済に影響を与えていた原油価格の高騰に対処するため、石油産出国に対して開発投資を促進する環境整備を強く促しました。

北朝鮮情勢に関しては、核問題を巡る六ヶ国協議への即時復帰を求めるとともに、日本人拉致問題を含む人権問題に関する国際社会の懸念に対し、北朝鮮が行動を起こすよう要求しました。

さらに、アフリカ自身の自立を支援するため、農業分野における人材育成や民間投資を促す経済インフラの整備に取り組むこと、そして最貧国の国際金融機関に対する債務を100パーセント削減することでも合意が形成されました。

議長総括の骨子は以下の通りです。

ロンドン同時爆破テロ事件を非難し、テロ対策を強化する。
地球温暖化問題について、先進国と開発途上国との対話を開始し、クリーン・エネルギー分野で協力する。
アフリカ支援を2010年までに倍増し、開発途上国全体への支援も同年末までに500億ドル増額する（うち250億ドルをアフリカ向けとする）。
北朝鮮の核問題を巡る六ヶ国協議を支持し、早期復帰を要求する。核兵器計画の放棄、拉致及び人権問題への対応も求める。
* 原油価格高騰を懸念し、産出国に是正措置を要求する。

ロンドン同時爆破テロ事件の影響

会議会期中の2005年 7月7日朝、ロンドン市内の公共交通機関を標的とした同時爆破テロ事件が発生しました。この事態を受けて、会議の議長であるブレア首相は一時的に会議を離れ、ロンドンに戻って対応にあたりました。首相不在時の議長代理については、公式には当時のジャック・ストロー外相が務めたとされましたが、日本の外務審議官（シェルパ）を務めた藪中三十二氏の著書によると、実際にはイギリス外務省の事務次官（シェルパ）が臨時に議長役を代行したと記されています。

ブレア首相はグレンイーグルズで緊急記者会見を行い、このテロ事件が主要国首脳会議の開催に合わせて引き起こされたものであるとの見解を示しました。

このテロ事件は、会議の雰囲気にも影響を与え、テロ対策が改めて重要な議題として取り上げられる契機となりました。最終的に、ロンドン同時テロを受けて、交通機関のテロ対策強化などを盛り込んだG8首脳声明が採択されました。

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