第45回トロント国際映画祭

第45回トロント国際映画祭：コロナ禍における映画の祭典

2020年9月10日から21日にかけて、第45回トロント国際映画祭が開催されました。世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により、映画祭の開催自体が危ぶまれる状況でしたが、主催者側の尽力により、規模を縮小しながらも無事に開催されました。オープニング作品は、スパイク・リー監督による『アメリカン・ユートピア』でした。

開催概要

通常とは異なり、今回はクロージング作品は上映されませんでした。カンヌ国際映画祭の中止を受け、トロント国際映画祭は「We Are One: A Global Film Festival」を立ち上げ、中止となった映画祭で公開予定だった作品を上映するプラットフォームを提供しました。また、ドライブインシアターを活用するなど、新たな試みも行われました。

ヴェネツィア国際映画祭、テルライド映画祭、ニューヨーク映画祭との連携も強化し、映画業界のエコシステムを維持するための協力体制を築きました。

6月24日には、9月10日から19日までの開催が正式に発表され、最初の5日間はドライブインや屋外での上映、その後はストリーミング・プラットフォームでの配信となりました。レッドカーペットや記者会見はバーチャルで開催されました。ストリーミングプラットフォームは「デジタルTIFFベルライトボックス」として展開され、過去の映画祭出品作のデジタルレンタルも提供されました。

海外渡航制限への対策として、映画マーケットとしての機能を維持するため、公式プログラム外の作品も追加されました。上映会場は、ソーシャルディスタンスを確保したTIFFベルライトボックスやオンタリオ・プレイス、ポルソンピアなどが使用されました。

当初、「マスク着用は任意」と発表されましたが、批判を受け「マスク着用は義務」へと変更されました。プログラム規模の縮小に伴い、ドキュメンタリーや若手監督作品にスポットライトが当たる機会が増える可能性も指摘されました。

アンバサダー

海外からの参加が困難な状況下で、映画祭のプロモーションに貢献するため、50名の「TIFFアンバサダー」が指名されました。

プログラム

オープニング作品はスパイク・リー監督の『アメリカン・ユートピア』。クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』もヴェネツィア国際映画祭と同日に公開されました。上映作品は、6月24日、7月30日、8月25日に分けて発表されました。

各部門

ガラ・プレゼンテーション
スペシャル・プレゼンテーション
コンテンポラリー・ワールド・シネマ
マスターズ部門
TIFFドキュメンタリー部門
発見部門
短編部門
ミッドナイト・マッドネス部門
プライムタイム
ウェイブレングス
特別上映
プラネット・アフリカ

業界賞部門では、北米の映画関係者向けに、パンデミックの影響で海外渡航が困難な状況を考慮し、特別な上映が行われました。

受賞者

受賞者は9月20日に発表されました。ドキュメンタリー部門とミッドナイト・マッドネス部門は上映作品が減ったため、受賞者のみが選出されました。観客賞は次点まで発表されました。プラットフォーム賞とカナダ第一回長編映画賞は、対象作品の不足により発表されませんでした。ショーン・メンデス財団チェンジメーカー賞が新設され、社会的メッセージ性のある作品を制作した映画作家が表彰されることになりました。

TIFFトリビュート・アワード

映画界への貢献を称えるTIFFトリビュート・アワードは、アンソニー・ホプキンス、クロエ・ジャオ、ミーラー・ナーイル、ケイト・ウィンスレットが受賞しました。授賞式は初めて生中継されました。

カナダ作品トップ10部門

カナダ国内の映画評論家と映画祭主催関係者の投票により、長編・短編の最優秀作品が選出されました。発表は2020年12月9日でした。

第45回トロント国際映画祭は、コロナ禍という困難な状況の中で、映画の力を信じ、新たな試みに挑戦した映画祭として、その歴史に刻まれました。

もう一度検索