第54回全国高等学校野球選手権大会

第54回全国高等学校野球選手権大会

1972年の夏、高校球児たちの夢舞台である阪神甲子園球場では、第54回全国高等学校野球選手権大会が開催されました。この大会は8月11日から23日までの11日間（休養日を除く）にわたり、全国から集結した代表校による熱戦が繰り広げられました。

この年の大会は、沖縄が日本に返還されてから初めての開催となる記念すべき大会でした。これを祝して、南九州代表として出場した名護高校の主将が、全選手を代表して選手宣誓の大役を務めました。

大会の概要にはいくつかの特筆すべき点があります。まず、選手の安全確保のため、この大会から打者が着用するヘルメットは片耳付きのものが義務付けられることになりました。これは高校野球における安全対策の重要な一歩でした。

また、大会開幕日である8月11日は朝からの雨により、開会式のみが行われ、予定されていた開幕戦は順延となりました。このため、開会式が行われた11日が「大会第0日目」と位置付けられ、実際に試合が始まった翌12日が「大会第1日目」と公式記録されています。開幕戦が雨で順延となるのは、1960年の第42回大会以来、12年ぶりの出来事でした。

大会終了後には、高校野球日本代表チームが初めて韓国へ派遣されるという国際交流も行われました。さらに、この大会では全国大会史上初めて、同名の学校同士が対戦するという珍しい出来事がありました。それは、三重代表の海星高校と長崎代表の海星高校の対戦です。

試合経過

大会では、1回戦から多くの白熱した試合が展開されました。延長戦にもつれ込む試合や、逆転サヨナラ勝ちなど、ドラマチックな瞬間が生まれました。準々決勝に進出したのは、津久見、明星、高知商、中京、天理、東海大工、柳井、高松一の8校です。中でも津久見と明星、高知商と中京、天理と東海大工、そして柳井と高松一のカードは、それぞれ緊迫した投手戦や打撃戦となりました。

準決勝では、津久見が天理を、柳井が高知商を破り、それぞれ決勝へ駒を進めました。決勝戦は8月23日に行われ、大会のクライマックスを迎えました。

大会を彩った選手たち

この大会でも数々の本塁打が生まれ、ファンを沸かせました。主な本塁打としては、第1号の山川猛選手（東洋大姫路）をはじめ、大城章幹選手（名護）、常田昭夫選手（日大桜丘）、中川信秀選手（津久見）、吉近寿一選手（津久見）、寺畑公男選手（東海大工）、岡村和彦選手（高知商）などが記録されています。

また、多くの将来有望な選手たちが甲子園の土を踏みました。その中には、後にプロ野球で活躍する選手も多く含まれています。主な出場選手としては、掛布雅之選手（習志野）、仲根正広選手（日大桜丘）、石井昭男選手（東海大相模）、林裕幸選手（東海大相模）、黒坂幸夫選手（糸魚川商工）、谷内野隆選手（星稜）、金本誠吉選手（中京）などがいました。

第54回大会は、沖縄返還という時代の節目に行われた記念大会であり、安全対策の強化や国際交流、珍しい同名校対決など、多くの出来事があった記憶に残る大会となりました。

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