第59回都市対抗野球大会

第59回都市対抗野球大会

第59回都市対抗野球大会は、1988年7月28日から8月7日まで、初めて東京ドームを舞台として開催されました。この大会は、それまでの会場であった後楽園球場から東京ドームへの移行という大きな転換点を迎え、その後の大会のあり方に大きな影響を与えました。

東京ドーム元年が生んだ記録的な盛況

会場を真新しい東京ドームに移して開催されたこの大会は、ドーム球場への高い関心も相まって、例年にない盛り上がりを見せました。連日、多くのファンが球場に足を運び、満員札止めとなる試合も続出しました。その結果、大会通算の観客動員数は、従来の記録（第53回大会の約35万7000人）を大幅に更新する、約76万3000人という驚異的な数字を記録しました。これは、東京ドームでの開催が都市対抗野球にもたらした集客力がいかに大きかったかを示しています。

本塁打数の変化と初出場チームの躍進

一方、近年の大会で増加傾向にあった本塁打数は、今大会では55本にとどまりました。空調設備を備えたドーム環境が投手にとって有利に働いた可能性や、本塁打が出にくいという評判が打者の意識に影響したことなどが要因として挙げられました。

この大会には、仙台市・日本たばこ、君津市・新日鐵君津、横浜市・三菱重工横浜の3チームが初出場しました。このうち、日本たばこと三菱重工横浜は快進撃を見せ、ベスト8に進出するなど、大会に新たな風を吹き込みました。

優勝チームと注目の選手たち

東京ドーム最初の栄冠を手にしたのは、川崎市・東芝でした。東芝は、過去に優勝（第54回大会）経験がありながら、その後2度も決勝で敗れる苦杯をなめていました。3度目の決勝進出となった今大会で、彼らは見事にその壁を乗り越え、5年ぶり3回目の黒獅子旗を獲得しました。決勝戦では、NTT東海（後のNTT北陸）と対戦し、激戦を制しました。

個人では、優勝チームの東芝から、高見泰範捕手が最高殊勲選手に贈られる橋戸賞を受賞しました。高見捕手は、打撃面での活躍に加え、卓越したリードで投手陣を巧みに牽引したことが高く評価されました。捕手としての橋戸賞受賞は、実に52年ぶりという快挙でした。

また、この大会で特に強い印象を残したのが、若獅子賞を受賞した堺市・新日鐵堺の野茂英雄投手です。独特なトルネード投法から繰り出す速球で次々に打者から三振を奪い、その能力の高さを全国に示しました。特に、2回戦で見せた延長17回完投の力投は、彼のポテンシャルを証明する鮮烈なデビューとなりました。若獅子賞は野茂投手と共に、河合楽器の平田幸夫投手も受賞しています。

その他、久慈賞にはNTT東海（NTT北陸）の上原勝男投手が、小野賞（善戦健闘チーム）には横浜市・三菱重工横浜が選ばれています。また、応援団コンクールでは東芝が最優秀賞に輝くなど、各チームのスタンドでの熱い応援も大会を彩りました。

放送体制においても新たな試みが行われ、文京ケーブルネットワーク（現・東京ケーブルネットワーク）により、文京区のサービス提供地域で全試合の生中継が実施されました。決勝戦は従来通りNHK総合テレビジョンでも中継されました。

第59回大会は、会場の変更によって観客動員数の記録を大幅に更新し、新たな時代を感じさせる大会となりました。同時に、東芝の粘り強い優勝、そして野茂英雄のような将来を嘱望される選手の登場など、都市対抗野球ならではのドラマが繰り広げられた記憶に残る大会と言えるでしょう。

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