第69回都市対抗野球大会

第69回都市対抗野球大会 概況

1998年7月21日から31日にかけて、社会人野球の祭典である第69回都市対抗野球大会が東京ドームで開催されました。全国各地の予選を勝ち抜いた代表チームが、真夏の東京で熱戦を繰り広げました。

大会前、前回大会で前年の覇者である本田技研が予選敗退するという波乱がありましたが、今大会で優勝候補の一角と目された日本生命は、安定した戦いぶりで危なげなく予選を突破し、本大会に順当に駒を進めました。

今大会の出場チームの中には、いくつかの注目すべきチームがありました。1993年に三菱重工名古屋から組織を分離し独立した岡崎市・三菱自動車岡崎が、創部からわずか5年目にして初めて本大会への出場権を獲得しました。これは今大会における唯一の初出場チームです。また、札幌市・JR北海道は、前身の「札幌鉄道局」として出場した第8回大会以来、実に64年ぶりとなる本大会への出場を果たしました。この64年というブランクは、都市対抗野球大会の歴史において最も長い出場間隔記録となりました。

大会が進むにつれて、優勝争いは新進気鋭の調布市・シダックス、初の黒獅子旗獲得を目指す千葉市・川崎製鉄千葉、そして伝統ある横須賀市・日産自動車の三つ巴の様相を呈していきました。特に日産自動車は、例年高い評価を受ける打撃陣に、さらに強力な補強選手を加え、その層の厚さを武器に次々と強豪チームを打ち破り、決勝への道を切り開きました。

そして迎えた決勝戦は、7月31日に日産自動車と川崎製鉄千葉の間で行われました。激しい攻防の末、日産自動車が川崎製鉄千葉を下し、1983年の第54回大会以来となる15年ぶり、チームとして2度目の都市対抗優勝を飾りました。決勝戦では、日産自動車の大平幸治、鷹野史寿、伊藤祐樹、川崎製鉄千葉の後藤光尊が本塁打を放つなど、両チームの強打が見られました。日産自動車の川越英隆投手が勝利投手、川崎製鉄千葉の須合哲哉投手が敗戦投手となりました。

優勝した日産自動車は、補強選手と既存選手が理想的に融合した強力なチーム力を大会を通じて発揮し、栄えある黒獅子旗を手にしました。一方、惜しくも準優勝となった川崎製鉄千葉も、最後まで粘り強い戦いを見せ、大会を大いに盛り上げました。

大会終了後、数々の個人賞およびチーム賞が発表されました。最も活躍した選手に贈られる橋戸賞には、決勝戦でも好投した日産自動車の川越英隆投手が選ばれました。敢闘賞である久慈賞は川崎製鉄千葉の田中泰外野手・指名打者が受賞し、新人選手の中で最も活躍した若獅子賞も川崎製鉄千葉の後藤光尊三塁手に贈られました。チームに贈られる小野賞は、準優勝ながら大会を盛り上げた功績を称え、川崎製鉄千葉が獲得しました。首位打者賞には、打率トップとなった日産自動車（日本石油から補強）の若林重喜一塁手が輝きました。

また、大会を通じて優れた活躍を見せた選手たちが、ポジションごとに大会優秀選手として表彰されました（所属や補強元は受賞当時）。

投手: 川越英隆（日産自動車）、安田武一（日産自動車（三菱自動車川崎））、須合哲哉（川崎製鉄千葉）、乙幡昌夫（川崎製鉄千葉（日本通運））、ラサル・バジェ（シダックス）、オマール・アヘテ（いすゞ自動車）
捕手: 黒須隆（日産自動車）、坪田浩武（川崎製鉄千葉）、坂田精二郎（シダックス）
一塁手: 若林重喜（日産自動車（日本石油））、西雄友昭（日本生命（中山製鋼））
二塁手: 大平幸治（日産自動車）、田中敏弘（川崎製鉄千葉（日本通運））
三塁手: 後藤光尊（川崎製鉄千葉）、桑元孝雄（いすゞ自動車（三菱自動車川崎））
遊撃手: 伊藤祐樹（日産自動車）、木下俊生（東芝（日本石油））、天川務（日立製作所）
外野手: 鷹野史寿（日産自動車）、斉藤裕次郎（日産自動車（三菱重工横浜））、清水信也（西濃運輸（三菱重工名古屋））、内田祐二（東芝）
指名打者: 田中泰（川崎製鉄千葉（日本通運））、大宅敦司（日本生命）、原利安（日立製作所）

さらに、大会を彩った応援団にも賞が贈られました。応援団コンクールでは、最優秀賞に川崎製鉄千葉、優秀賞に日産自動車、敢闘賞に西濃運輸、特別賞に日立製作所が選ばれ、グラウンドでの熱戦とともに、スタンドからの熱い声援も大会を盛り上げました。

この第69回大会は、新たなチームの台頭や歴史的な出場記録、そして古豪の復活優勝など、社会人野球の魅力が凝縮された、記憶に残る大会となりました。

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