第8回全日本都市対抗野球大会

第8回全日本都市対抗野球大会

1934年（昭和9年）の夏、日本各地の強豪チームが集結し、第8回全日本都市対抗野球大会が開催されました。この年の熱戦は、8月5日から11日までの期間、東京の明治神宮野球場で行われました。

大会の特色と初出場チーム

この大会には、いくつかの新しい顔ぶれが登場し、注目を集めました。初めて本大会の土を踏んだのは、鎌倉市代表の鎌倉老童軍、新潟市代表の新潟コンマーシャル倶楽部、米子市代表の大阪鉄道局米子、そして遠く海を越えた台北市代表の全台北の計4チームです。

特に異彩を放ったのが、鎌倉老童軍でした。このチームは、作家の久米正雄をはじめとする鎌倉在住の文化人たちが中心となって結成されたもので、現役を退いた往年の名選手たちを集めて編成されました。彼らは、前年の大会に出場していた川崎市のコロムビアといった実力チームを予選で打ち破り、堂々の初出場を果たし、大きな話題となりました。

優勝候補と全大阪の挑戦

大会が始まる前から、最も優勝に近いと目されていたのは、大阪市を代表する全大阪チームでした。彼らは、この年のチーム強化に力を入れており、早稲田大学の三原脩選手や慶應義塾大学の牧野直隆選手といった、当時学生野球で名を馳せたスター選手たちをチームに迎え入れました。これにより、全大阪は堅牢な守備を誇る内野陣を構築し、他チームを圧倒する戦力を整えたのです。

事前の高い評価に違わず、全大阪は勝ち進み、ついに頂点に立ちました。都市対抗野球のシンボルである黒獅子旗を掲げるまで、全大阪は過去に7回の挑戦で涙を飲んでいましたが、記念すべき8度目の出場にして、ついに念願の初優勝を成し遂げました。これはチームにとって歴史的な快挙であり、長年の努力が実を結んだ瞬間でした。

劇的な決勝戦

大会のクライマックスである決勝戦は、8月11日に行われ、観衆を熱狂させる展開となりました。この試合は、前年の大会決勝に続いて、延長戦にもつれ込む激闘となり、最後にサヨナラゲームで決着するという劇的な幕切れとなりました。全大阪の勝利投手は伊達投手、対する敗戦投手は角地投手でした。2年連続で決勝が延長サヨナラという、都市対抗野球のドラマ性を象徴する一戦となりました。

最優秀選手

大会を通じて最も活躍した選手に贈られる最優秀選手賞には、八幡製鉄の遊撃手、加藤喜作選手が選ばれました。彼の卓越した守備や打撃は、多くの野球ファンに深い印象を残しました。

第8回大会は、全大阪の初の栄冠、個性的な初出場チームの登場、そして決勝での息詰まるドラマなど、多くの記憶に残るシーンを生み出し、都市対抗野球の歴史に新たな1ページを刻みました。

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