第91期棋聖戦 (将棋)

第91期棋聖戦

第91期棋聖戦は、スポンサー名を冠し「第91期ヒューリック杯棋聖戦」として、2020年度（2019年5月7日から2020年7月16日まで）にかけて開催された将棋のタイトル戦です。この棋戦は、後の将棋界を象徴する出来事の舞台となりました。

藤井聡太七段の記録更新と挑戦

特に大きな注目を集めたのは、当時七段だった藤井聡太棋士の活躍です。挑戦者決定戦では、強豪である永瀬拓矢二冠との激戦を制し、五番勝負で渡辺明棋聖への挑戦権を獲得しました。この挑戦は、藤井七段が17歳10ヶ月20日という若さで成し遂げたものであり、これにより屋敷伸之四段（当時）が保持していた最年少タイトル挑戦記録を、実に31年ぶりに塗り替える快挙となりました。

五番勝負の詳細

挑戦者となった藤井聡太七段と、棋聖位を保持する渡辺明棋聖による五番勝負は、大きな注目の中で行われました。結果は、藤井七段が渡辺棋聖から3勝1敗で棋聖位を奪取する形となりました。

最年少タイトル獲得

この勝利により、藤井聡太七段は17歳11ヶ月という年齢で自身初のタイトルとなる棋聖を獲得しました。これは、屋敷伸之五段（当時）が打ち立てた最年少タイトル獲得記録を30年ぶりに更新する、歴史的な瞬間となりました。このタイトル獲得は、藤井棋士の将棋界における地位を確固たるものとする画期的な出来事でした。

注目の対局

五番勝負では、特に以下のような対局が話題となりました。

第1局: この対局は内容が高く評価され、その年の第48回将棋大賞において「名局賞」に選ばれました。
第2局: 藤井七段が指した△3一銀（58手目）は、従来の定跡やAIの評価とは異なる独創的な一手として、専門家やファンから「AI超えの手」と称され、広く話題となりました。

五番勝負は藤井七段の3勝1敗で決着したため、第5局は行われることなく終了しました。

大会運営への影響

この時期は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が進んでいました。そのため、感染拡大防止の観点から、例年五番勝負の一部対局が行われていた兵庫県洲本市のホテルニューアワジでの開催が中止されるなど、大会運営にも影響が見られました。安全を考慮した上での開催形態となりました。

棋聖戦の構成

棋聖戦は、多くの棋士が参加するトーナメント形式で挑戦者を決定します。第91期も、一次予選、二次予選、そして決勝トーナメントという段階を経て挑戦者が絞り込まれました。

一次予選: 多数の棋士が参加し、二次予選への進出者（8名）を決定します（イ組からチ組まで）。
二次予選: 一次予選を突破した棋士と、シード棋士が加わり、決勝トーナメント進出者（8名）を決定します（1組から8組まで）。
* 決勝トーナメント: 二次予選を勝ち抜いた棋士によって行われ、五番勝負に臨む挑戦者を決定します。

そして、決勝トーナメントで優勝した挑戦者が、前年度の棋聖位保持者と五番勝負を行い、棋聖のタイトルを争います。

まとめ

第91期棋聖戦は、藤井聡太七段の歴史的な記録更新と初タイトル獲得という、将棋史に特筆されるべき出来事があった棋戦です。特に最年少でのタイトル挑戦・獲得記録の更新は、その後の将棋界の勢力図を塗り替える予兆ともなりました。また、コロナ禍という社会情勢の中で運営されたことも、この棋戦の記憶すべき側面です。第1局の名局賞受賞や、第2局での「AI超え」と評された一手など、将棋の内容面でも多くの話題を提供した大会でした。この棋戦を機に、藤井聡太という才能が本格的にタイトル戦線で躍動を開始しました。

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