第92期棋聖戦 (将棋)

第92期棋聖戦

将棋界において重要なタイトルの一つである棋聖位を巡る戦い、第92期棋聖戦は、スポンサーであるヒューリック株式会社の協賛を得て、「第92期ヒューリック杯棋聖戦」として実施されました。本棋戦は2021年度のスケジュールの中で行われ、具体的な期間としては、開幕の2020年5月26日から、タイトルをかけた五番勝負の最終局が行われた2021年7月3日まで、約1年以上にわたる長い期間にわたって開催されました。

棋聖戦は、多数の棋士が参加する大規模なトーナメント形式で行われ、タイトル保持者への挑戦者となるためには、予選段階から勝ち上がっていく必要があります。第92期においても、一次予選、二次予選という段階を経て、さらに決勝トーナメントへと進む構造が採用されました。一次予選はイ組からチ組までの8ブロックに分かれ、これを突破した棋士が二次予選へ進みます。二次予選は1組から10組までの10ブロックで争われ、各ブロックの勝者が決勝トーナメントへ駒を進めます。決勝トーナメントはこれらの勝ち上がり者とシード棋士によって行われ、その優勝者がタイトル保持者への挑戦権を獲得します。

本棋戦で挑戦者決定戦まで勝ち進んだのは、当時の名人である渡辺明九段と、王座タイトルを保持していた永瀬拓矢九段という、将棋界を代表する実力者同士でした。この白熱した一局を制したのは渡辺九段であり、これにより前年度に史上最年少で棋聖位を獲得していた藤井聡太棋聖への挑戦権を得ることになりました。タイトル五番勝負は、若きタイトル保持者である藤井棋聖と、実績豊富な渡辺名人の間で争われることとなり、大きな注目を集めました。

注目のタイトル五番勝負は、藤井聡太棋聖がその実力を遺憾なく発揮する展開となりました。挑戦者である渡辺明名人を相手に、藤井棋聖は圧倒的な強さを見せ、開幕から連勝を重ねます。結果、藤井棋聖が3連勝を飾り、見事に棋聖位の初防衛を果たしました。五番勝負は藤井棋聖の3勝0敗というスコアで第3局で終局したため、本来予定されていた第4局および第5局は実施されることなくシリーズは幕を閉じました。

この棋聖防衛は、藤井棋聖にとって複数の歴史的記録を更新する契機となりました。防衛を達成した時点の年齢は18歳11ヶ月であり、これは将棋界における最年少タイトル防衛記録を塗り替える快挙です。これまでの記録は、かつて「七冠」を達成したことでも知られる屋敷伸之九段が保持していました。さらに、タイトルを防衛したことによる規定に基づき、藤井棋聖は九段へと昇段しましたが、これもまた史上最年少での九段昇段記録となりました。従来の記録は、当時竜王位を保持していた渡辺明九段（現名人）が保持していたものです。

第92期棋聖戦における藤井聡太棋聖のタイトル防衛、そしてそれに伴う二つの最年少記録の更新は、将棋界における彼の傑出した存在感と、新時代の到来を強く印象づける出来事として、多くのファンに記憶されることとなりました。

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