筆子塚

筆子塚（ふでこづか）

筆子塚とは、江戸時代に寺子屋や家塾で読み書きや算術を学んだ生徒（筆子）たちが、師の死後にその徳を偲び、費用を出し合って建立した墓または供養塔のことです。明治時代に入ってからも建立された例が見られます。師匠塚、筆子塔、筆子碑とも呼ばれます。

概要

寺子屋は、現代の小学校のような役割を果たし、7～8歳頃に入学した子供たちが3～5年ほどの間、読み書きや算術などの実用的な知識を学びました。寺子屋に通う生徒は「筆子」と呼ばれました。そのことから、子供が学業に励むようにという願いを込めて、女の子の名前に「筆子」という名前が用いられることもありました。

江戸時代においては、社会に出る前の準備教育を寺子屋で終える者が多く、寺子屋の師匠は筆子たちにとって生涯の師とも言うべき存在でした。「寺子屋」という名前の通り、師匠がお寺の住職である例も少なくありませんでした。

関東地方などには、各地に筆子塚が点在しています。その特徴として、墓石全体が筆の穂先のような形をしている点が挙げられます。これは、筆子が建立した筆子塚に共通する特徴であり、一種の約束事であったと考えられます。また、「坂東の大学」と称された足利学校の歴代校長の墓石も、筆の穂先の形をしています。

筆塚との違い

筆塚と呼ばれるものも存在します。これは、長年使用してきた筆を供養するために埋めた塚を指します。転じて、筆を供養するだけでなく、筆子塚と同様に寺子屋や塾の先生を祀る意味合いも持つ場合があります。筆塚は、使い古した筆への感謝の念と、文字文化への敬意を表すものであり、筆子塚とはその意味合いが異なります。







筆子塚は、単なる墓石や供養塔ではなく、江戸時代の教育や師弟関係、そして庶民の文化を今に伝える貴重な文化遺産と言えるでしょう。

参考文献

『筆子塚研究』 川崎喜久雄男 多賀出版 1992年 ISBN 4811528611

関連項目

寺子屋
* 筆

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