筆順

漢字の筆順とは

漢字の筆順とは、漢字を構成する点や線（筆画）を書き進める順番のことです。「書き順」とも呼ばれます。筆順は、ただ単に字を書く順番だけでなく、文字の美しさや読みやすさにも影響を与える重要な要素です。

日本における筆順の基準

日本では、1958年（昭和33年）に文部省（現在の文部科学省）が「筆順指導の手びき」を示しました。これは、教育[[漢字]]881字について、学習指導上の混乱を避けるために筆順をできるだけ統一することを目的として作成されました。この手引きは、学校教育における漢字の筆順の基準となっています。

ただし、「筆順指導の手びき」は、あくまでも指導上の目安であり、漢字の筆順が1つしかないわけではありません。広く用いられる筆順が複数存在する漢字や、時代や国によって異なる筆順が存在します。そのため、「手びき」に示された筆順を唯一正しいものと断定することはできません。

筆順が複数ある漢字の例

「筆順指導の手びき」にも、「広く用いられる筆順が2つ以上あるもの」として、以下の漢字が例示されています。

上
点
店
取
最
職
厳
必
発
登
感
盛
馬
無
興

これらの漢字以外にも、複数の筆順を持つ漢字は少なくありません。また、行書で漢字を書く際には、筆順が異なることもあります。現在の教科書では、筆順が異なる字については、適切な説明を加えることになっています。

筆順の原則

「筆順指導の手びき」には、筆順の原則が示されています。以下に主な原則をまとめました。

大原則1：上から下へ
文字の上部分から下部分へと書き進めます。
大原則2：左から右へ
文字の左部分から右部分へと書き進めます。
原則1：横画が先
横画と縦画が交差する場合は、原則として横画を先に書きます。
原則2：横画が後（原則1の例外）
横画と縦画が交差する場合でも、特定の文字や部首においては、横画を後に書くことがあります。（例：田、王など）
原則3：中が先
左右に他の部分があり、左右が1、2画で構成される場合は、中央の部分を先に書きます。 （例：小、水など）。ただし、「忄」や「火」は例外です。
原則4：外側が先
「囗」（くにがまえ）のように囲む形は、先に書きます。
原則5：左払いが先
左払いと右払いが交差する場合は、左払いを先に書きます。
原則6：貫く縦画は最後
字全体を貫く縦画は、最後に書きます。
原則7：貫く横画は最後
字全体を貫く横画は、最後に書きます。ただし、「世」は例外です。
原則8: 横画と左払い
横画が長く、左払いが短い場合は、左払いを先に書きます。
横画が短く、左払いが長い場合は、横画を先に書きます。

原則で説明できないもの

上記の原則で説明できない筆順も存在します。

繞（にょう）の筆順
繞（にょう）には、先に書くものと後に書くものがあります。例として、「処」「起」などは先に書き、「近」「建」などは後に書きます。
左払いの筆順
左払いも、先に書くものと後に書くものがあります。例として、「九」「皮」などは先に書き、「力」「刀」などは後に書きます。

内外地域差

漢字を使う国や地域によって、筆順の基準が異なる場合があります。例えば、中国や台湾では、日本とは異なる筆順が指導されることがあります。特に、「右」などの字は、日本と中国で標準的な筆順が異なります。

また、同じ国内でも、書家が独自の筆順で書くこともあります。さらに、中国政府が1997年に一部の漢字の筆順を調整したため、改正前と改正後に初等教育を受けた世代の間で違いが見られることもあります。

まとめ

筆順は、漢字を正しく、そして美しく書くための重要な要素です。しかし、唯一絶対のルールではなく、複数の書き順が存在することも理解しておく必要があります。「筆順指導の手びき」は、あくまでも学習指導上の目安であり、筆順の多様性を認めることも大切です。

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