範疇論 (アリストテレス)

『範疇論』の概要

『範疇論』は、古代ギリシアの哲学者アリストテレスによる著作で、彼の主著『オルガノン』の一部を成しています。この作品は、言葉や概念の分類を扱い、古代から中世、さらには現代に至るまで哲学や論理学の基盤として位置づけられています。「カテゴリー論」の異称でも知られ、主に十のカテゴリに基づく理解が展開されています。

書籍の名称について

本書の名前は多様で、古代の註釈家たちにより「十のカテゴリー」や「諸カテゴリーについて」など、いくつかの異なる表記が残されています。この他にも「十の類について」や「普遍的な言葉について」といったタイトルが存在し、特に第4章では10種類の分類が示されたことから、これらの名称が使われています。

構成と内容

『範疇論』は15章で構成されており、以下の3つの主要な部分に分かれます：
1. 第1章：ここでは、後の章で用いられる用語「同名異義的」「同名同義的」「派生名的」が紹介されます。
2. 第2章から第9章：本編では、さまざまな表現方法や概念の分類が詳述されています。これにより、言葉の多義性や同義性についての理解が進められます。
3. 第10章から第15章：この部分は「対立」「反対」などの関係性における言葉の違いを扱い、後世に挿入された部分とされています。

特に、10章から15章は「post-praedicamenta」と称され、これがアリストテレスのものではないと考えられていることが通説です。

主要な概念

第1章では、「同名異義的」「同名同義的」「派生名的」といった多様な概念の説明が行われ、次第に個々の語の特性について考察が続きます。例えば、「同名同義的」カテゴリーは名前と本質的な意味が同じものを指し、「人間」と「牛」といった具体的な例が挙げられます。一方、「同名異義的」は名称は同じでも中身が異なるケースを示します。

第2章では表現方法について2つの形式が示され、単語のみの表現と文による表現とが比較されます。さらに、第3章では、述語になるものとならないものについて考察し、基体の重要性が浮き彫りにされます。

第4章においては、単語の意味する具体的な内容が「実体」「量」「質」などに分類され、観察される事物についての理解が深まります。また、第5章から第9章にかけて、各種のカテゴリーにおける「実体」や「質」などの解明が続きます。

影響と意義

『範疇論』は、哲学的な論理学の発展に寄与した重要な作品です。アリストテレスの概念分析は、後の哲学者や論者たちによって再解釈され、議論の基盤となってきました。なお、訳書としては、『アリストテレス全集 1 カテゴリー論 ほか』（岩波書店、1971年）、『新版 アリストテレス全集 1 カテゴリー論　命題論』（同、2013年）があります。

このように、『範疇論』は人間の思考における根本的な枠組みを提供し、哲学や論理学の理解を深めるための重要なリソースとして現在に至るまで活用されています。

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