篠田鉱造

篠田鉱造：実話蒐集で描く明治の息吹

篠田鉱造（1872年1月15日 - 1965年3月18日）は、明治・大正・昭和にわたり、新聞記者、実話蒐集作家、明治文化研究家として活躍した人物です。俳人としては胡蝶の号を用いていました。

経歴と実話蒐集

東京・赤坂に生まれた篠田は、明治28年（1895年）に報知新聞社に入社。明治35年（1902年）から報知新聞に連載された聞き書きコラムが、彼の作家としての活動の始まりでした。このコラムでは、幕末から明治前半にかけての出来事を、実際に体験した人々から話を聞き、その内容を記事として掲載していました。

この連載をまとめた『幕末百話』を皮切りに、彼は「聞き書き百話シリーズ」を出版。江戸や東京に住む古老や、様々な業界の人々から直接話を聞き、それを忠実に記録するスタイルを確立しました。この実話蒐集のスタイルが、結果として後世に貴重な資料を残すことになったのです。

篠田の記録は、市井の庶民生活の細部、維新後の武士の動向、事件、食べ物、料理屋、芸能、花柳界、様々な職業に携わる人々、そして町の変遷など、多岐にわたります。これらの記録は、当時の人々の語り口そのままに書き残されており、まるでタイムスリップしたかのような臨場感を味わうことができます。

批判について

一方で、篠田の著書には批判的な意見も存在します。高島俊男は、篠田の著書『明治百話』について、篠田の文章に語り手の名前や聞き書き時期の明記がない点、また、自身の親である質屋の思い出を、なぜか孫から「聞き書き」している点などを指摘し、篠田の創作がかなり含まれているのではないかと論じています。

著書一覧

『幕末百話』（内外出版協会 1905年、増補版・万里閣書房 1929年、角川選書 1969年、岩波文庫 1996年、ワイド版 2001年）
『明治百話』（四条書房 1931年、角川選書 1969年、岩波文庫（上・下） 1996年、ワイド版 2005年）
『幕末明治女百話』（四条書房 1932年、角川選書 1971年、岩波文庫（上・下） 1996年）
『銀座百話』（青蛙房 1937年、角川選書 1974年、河出書房新社 2016年）
『銀座・築地物語絵巻』（高山書院 1941年）
『明治開化奇談』（明正堂 1943年、角川選書 1975年）

篠田鉱造の著作は、明治という時代の息吹を今に伝える貴重な資料であり、当時の人々の生活や文化を知る上で、非常に重要な役割を果たしています。彼の著作を通して、明治の時代にタイムスリップし、その魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。

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