籍貫

籍貫について

籍貫（せきかん）とは、中華圏で用いられる「祖先の出身地」を示す言葉です。現代では、一般的に「○○省××県」や「○○省△△市」といった形で県や市のレベルまで具体的に示されます。この概念は、家族のルーツや出自を示す重要な要素として位置づけられています。

中華民国における運用

中華民国の制度では、1931年に国民政府が制定した戸籍法に籍貫の記載に関する規定が設けられています。この法律においては、「子は父の本籍を自身の本籍とする」とされ、父親の籍貫が子供の籍貫となることが明記されていました。1946年から発行が始まった国民身分証にも「本籍」欄が設けられ、1949年に中華民国政府が台湾に移転してからも、この制度は引き続き維持されました。これによって、台湾に住む外省人の子孫は、たとえ台湾で生まれ育ったとしても本籍が中国大陸のままとされ、「台湾人」としての扱いがされない事態が続いていました。

しかし、年月が経つにつれて民主化運動が進展し、「本籍の運用が現在に即していない」との批判が高まるようになります。これを受けて、1992年には立法院が戸籍法を改正し、本籍を廃止して出生地を記載することに変更しました。この改正は、多くの国民にとって新たな身分認識の方向性を示すものとなりました。

中華人民共和国における運用

一方、中華人民共和国では、1991年に制定された幹部檔案工作条例により、党員は「祖居地」、つまり父方の祖父が長い間住んでいた場所を籍貫として登録する必要があると定められています。この「長く住んでいた」という基準に関しては明確な期間は示されておらず、個々の判断に委ねられています。例えば、もし党員「A」の父が先祖代々住んでいた上海市から北京市に移住した場合、Aの籍貫は「上海市」とされることになります。しかし、Aの子供たちの籍貫は「北京市」となるため、籍貫は代々引き継がれるものではなく、その都度変化することになります。

習近平党総書記は北京市出身ですが、彼の父親である習仲勲の出身地である陝西省富平県を籍貫としていることが、その規定の一例として挙げられます。

一般の国民に関しては、公安部が1995年に発表した新しい戸籍管理制度により、籍貫は「本人の祖父の居住地」と定義されています。この規定により、籍貫欄には省級行政区（省・自治区・直轄市）や県級行政区（区・県級市・県）を記入する義務が生じます。また、中華人民共和国に帰化した外国人の場合は、帰化する前の国籍名を籍貫として記載する必要があります。

まとめ

籍貫という概念は、家族のルーツや出自を示す重要なものであり、中華圏の国々においてその運用は多岐にわたります。中華民国と中華人民共和国では、その扱いや運用の仕方に明確な違いが存在し、それぞれの社会的背景や歴史的経緯を反映しています。特に台湾における籍貫の扱いや、中華人民共和国における党員と一般市民の籍貫の違いは、国ごとの制度の差異を示す興味深い事例です。

もう一度検索