米倉壽仁

米倉壽仁：詩情豊かなシュルレアリスムの画家

1905年、山梨県甲府市に生まれた米倉壽仁は、日本のシュルレアリスムを代表する画家にして詩人です。甲府中学校卒業後、名古屋高等商業学校に進学。在学中には、のちに日本におけるシュルレアリスムの導入に貢献する詩人、山中散生と親交を深めました。卒業後は甲府の学校で教員を務めながら、創作活動に励みます。

1930年には、地元の画家仲間とともに「六人社」を結成し、精力的な展覧会活動を開始。その後上京し、1931年には二科展で、1935年には独立展で入選を果たすなど、着実に画業を積み重ねていきます。この頃には、満洲や朝鮮半島への写生旅行も行い、独特の感性を磨いていました。

教職を辞した1936年には、銀座で初個展を開催。翌年には山梨美術協会の創立会員となり、さらには西東書林から第一詩集『透明ナ歳月』を刊行しました。詩と絵画、両分野で才能を発揮する稀有な存在として、注目を集め始めたのです。

1930年代後半から第二次世界大戦中は、創紀美術協会や美術文化協会といった美術団体に所属し、創作活動を継続。戦争の影響で一時帰郷して家業を助ける時期もありましたが、1943年には再び満州への写生旅行に出かけ、そこで得た経験も作品に反映されていると考えられます。戦後は、美術文化協会を脱退し、濱田稔、堀田操らと共に「サロン・ド・ジュワン」を結成。このグループの展覧会は、戦後の日本の美術界に大きな影響を与えました。

米倉壽仁の作品は、シュルレアリスムの特徴である幻想的な世界観と、詩情豊かな表現が見事に融合しています。代表作に挙げられる『ヨーロッパの危機』（1936年）、『破局（寂滅の日）』（1939年）、『黒い太陽』（1954年）など、多くの作品が山梨県立美術館や東京国立近代美術館に収蔵されています。これらの作品からは、時代の激動を反映した内省的な表現と、独自のシュルレアリスム世界観への深い探求が感じられます。

1979年には山梨県立美術館で個展を開催し、その画業が広く再評価される機会となりました。晩年まで創作活動を続け、1994年に89歳で生涯を閉じました。没後も、2022年には山梨県立美術館で回顧展「米倉壽仁展 透明ナ歳月 詩情のシュルレアリスム画家」が開催されるなど、その作品は現在も高い評価を得ています。

米倉壽仁は、詩と絵画の両分野で才能を開花させ、日本のシュルレアリスムの発展に大きく貢献した重要な作家です。彼の作品は、日本のシュルレアリスムを理解する上で欠かせないものとなっています。彼の残した詩や絵画は、今もなお多くの人々に感動を与え続けているのです。

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