米国産牛肉

米国産牛肉とは

米国産牛肉とは、アメリカ合衆国を原産とするか、またはアメリカ合衆国で加工された牛肉のことです。広大な草地と豊富な穀物、肥育ホルモンなどの薬剤利用により、粗放的かつ低コストな生産が実現しています。2012年の米国の肉牛生産額は764億ドルに達し、農業生産額の約19.4%を占めています。また、ハンバーガーやステーキといった特徴的な食文化も有しています。

2015年現在、米国は牛肉の生産量、消費量、輸入量で世界第1位、輸出量で世界第4位を誇ります。

米国産牛肉の生産

牛の飼育頭数

米国の牛飼養頭数は1975年に1億3200万頭と過去最高を記録しましたが、干ばつなどの影響で2014年には約8900万頭まで減少しました。しかし、その後は牛群再構築により徐々に増加傾向にあります。アメリカ合衆国農務省（USDA）全国農業統計局（NASS）によると、2016年1月1日時点の牛飼養頭数（乳牛を含む）は約9200万頭、うち肉用経産牛は約3033万頭です。

農家の戸数

アメリカ合衆国農務省の2012年米国農業国勢調査によると、肉用経産牛飼養戸数は約72万8000戸で、高齢化などにより減少傾向にあります。

主要な州

2016年1月1日現在の肉用経産牛の飼養頭数は、テキサス州が約429万頭（14.1%）、オクラホマ州が約195万頭（6.4%）、ミズーリ州が約191万頭（6.3%）、ネブラスカ州が約185万頭（6.1%）、サウスダコタ州が約169万頭（5.6%）となっています。また、肉用肥育牛の飼養頭数は、ネブラスカ州が約252万頭（19.1%）、テキサス州が約244万頭（18.5%）、カンザス州が約223万頭（16.9%）、アイオワ州が約123万頭（9.3%）、コロラド州が約91万頭（6.9%）となっています。

米国産牛肉の生産構造

米国の牛肉生産は、繁殖部門と肥育部門に分かれており、その間をつなぐ育成農家も存在します。養豚のような一貫経営は一般的ではなく、繁殖農家と肥育農家は通常別々の農家が営んでいます。

繁殖農家

広大な草地を用いた周年放牧が中心で、舎飼いは一般的ではありません。子牛の出産時期は牧草の最盛期である春から夏に合うように計画されており、この時期に生まれる春子牛が年間産子数の約8割を占めています。南部地域では、春子牛との差別化を狙って秋子牛を生産する経営スタイルも見られます。

育成農家

育成農家は、繁殖農家から子牛を購入し、フィードロットで本格的に肥育できるように育てます。

肥育農家

肥育農家は、フィードロット（肥育場）で100日から230日程度の期間をかけて、体重が約590kgになるまで肥育します。肥育農家には、牛を購入して肥育する農家のほか、預託農家（牛を購入せず所有権を持たないまま肥育業務だけを請け負う農家）もあります。

パッカー

食肉処理加工企業は「パッカー」と呼ばれ、タイソンフーズ、エクセル、JBS、ナショナルビーフパッキングの4社（四大パッカー）がシェアの8割を占めています。

業界団体

全米肉牛生産者・牛肉協会（NCBA）：全米最大の生産者団体
アメリカ食肉協会（AMI）：全米最大の食肉業界（加工業者・パッカー）団体

貿易

2015年の米国の牛肉輸出量は102万8000トンでした。

日本

日本においては1991年に輸入が自由化されました。

ブラジル

ブラジルへの牛肉輸出が2016年8月に再開されました。

中国

中国への牛肉輸出再開について2016年9月に中国政府が見通しを示しました。

米国産牛肉に関する法律

1916年シェパード改正法
1946年農業マーケティング法
1921年パッカーズ・ストックヤード法
1999年畜産物報告義務法

格付け

牛肉の格付けには、歩留等級（生体重に対する精肉歩留まりの割合）と肉質等級があります。米国では、歩留等級はY1からY5まで、肉質等級ではプライム、チョイス、セレクトなどに分けられます。

安全性

BSE問題

1986年にイギリスでBSEが確認されたことを受け、1990年に歩行困難な牛などを対象としたBSEサーベイランス（狂牛病監視・検査システム）を採用しました。米国では1997年には肉骨粉の飼料への使用が禁止されましたが、2003年にBSEの発生が確認され、日本、韓国、台湾などが米国産牛肉の輸入を禁止しました。2005年には日米で定めた新たな輸入条件のもとで輸入が再開されました。

トレーサビリティ

2016年9月現在、連邦レベルでのトレーサビリティシステムは存在しません。2003年のBSE発生を受け、アメリカ合衆国農務省は2004年に全国家畜個体識別制度（NAIS）を導入しましたが、コストや報告義務の負担増から反発を受け、2010年に廃止されました。

残留ホルモン剤問題

米国では、牛を短期間で肥育させる成長促進剤としてホルモン剤が投与されています。アメリカ産の牛肉の赤身部分には、エストロゲンが、ホルモン剤を使用していない国産牛肉と比較して多く残留していることが指摘されています。ホルモン剤の使用は日本やEUでは禁止されていますが、日本では基準を下回る限り許可されています。

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