米沢大火

米沢大火（よねざわたいか）

米沢大火とは、大正時代、すなわち1910年代に現在の山形県米沢市で相次いで発生した、二つの大規模火災の総称です。これらの火災は、米沢の市街地に壊滅的な被害をもたらし、街の大部分を焼き尽くしました。当時の米沢の街並みは、この二度の大火によって大きく変貌することとなりました。現在、市街地に残る古い建物も、多くはこの大火以降に再建されたものです。記事中で触れる町名や金額は、全て当時のものに基づいています。

1917年の大火（大正6年）

一度目の大火は、1917年（大正6年）5月22日の午前10時30分頃に発生しました。出火元は代官町の一角でした。この時、米沢では風速25メートルにも達する強い西北風が吹き荒れており、火の勢いは瞬く間に拡大しました。炎は強風にあおられ、市街地をなめ尽くしました。

この大火災により、11名の尊い命が失われ、家を追われた罹災者は10,464名に及びました。焼失した建物の数は3,325棟、損害額は357万円余という甚大な被害を記録しています。火の手はようやく同日の午後4時30分頃に鎮火しました。

出火原因は、出火元の住宅に住んでいた警察官の内縁の妻が、炊事中に七輪の火を誤って床に落とし、さらにその火を消そうとする際に、傍にあった石油ランプまで倒してしまったことによるものでした。

未曽有の被害に対し、被災者への支援として、大正天皇皇后からは山形県に対し、救恤金として金4,000円が下賜されています。

この大火で焼失した主要な建物には、以下のものが含まれます。
米沢警察署
米沢税務署
米沢郵便局
学校4校

1919年の大火（大正8年）

二度目の大火は、その二年後、1919年（大正8年）5月19日の午前11時頃に発生しました。出火場所は舘山口町でした。この時も風速15メートルの強い西北風が吹いており、火災は急速に拡大しました。1917年の火災と比べると規模はやや小さいものの、これもまた米沢に大きな被害をもたらした大規模火災でした。

この火災では、1名の死者が出ており、焼失した建物は1,385棟に上りました。損害額は約400万円と見積もられています。火災は同日午後3時過ぎにようやく鎮火に至りました。

火災の原因は、近くにあった織物工場の煙突から飛んだ火の粉が、隣接する民家の萱葺き屋根に燃え移ったこととされています。

この火災で焼失した主な建物の中には、以下のものが含まれます。
米沢市役所
南置賜郡役所
上杉神社
上杉伯爵邸（現:上杉記念館）

二度の大火がもたらしたもの

わずか二年足らずの間に発生したこれら二度の大火は、当時の米沢市街地の大部分を文字通り灰燼と化させました。失われた多くの命、膨大な財産、そして歴史ある建物の焼失は、米沢市民にとって計り知れない打撃でした。しかし、市民は困難に立ち向かい、焼け野原から街の再建を進めました。現在、米沢市街地に現存する建物で最も古いものの多くが、これら大火後の復興期に建てられたものであることからも、二度の大火がその後の米沢の都市構造や景観に与えた影響の大きさが伺えます。

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