米澤嘉圃

米澤嘉圃(1906-1993)は、20世紀日本の中国美術史研究を代表する学者のひとりです。秋田県に生まれ、旧制暁星中学校、福岡高等学校を経て、1931年に東京帝国大学文学部美学美術史学科を卒業しました。その後、東方文化学院東京研究所勤務などを経て、1949年には東京大学東洋文化研究所の教授に就任。1967年に東京大学を定年退官した後も、武蔵野美術大学学長として活躍しました。

米澤の専門は中国美術史、特に中国絵画史です。彼は中国絵画、とりわけ山水画の研究に深く取り組み、その造詣の深さは広く知られていました。彼の研究は、単なる美術史の記述にとどまらず、中国絵画が持つ思想や文化的な背景を深く考察することを特徴としています。緻密な分析に基づいた学術的な研究論文だけでなく、より一般向けの分かりやすい解説にも力を注ぎました。そのため、専門家だけでなく、広く一般の人々にも中国美術の魅力を伝えることに貢献しました。

代表的な著書として、『中国絵画史研究 山水画論』（平凡社、1962年）が挙げられます。この著作は、中国山水画の歴史と表現技法を体系的に解説したもので、今日でも高く評価されています。また、没後の1994年には『米沢嘉圃美術史論集』（国華社）が刊行され、彼の生涯にわたる研究成果がまとめられました。これらの著作は、後の中国美術史研究者たちにとって貴重な資料として活用されています。

学術研究活動に加え、米澤は美術史学会代表（1962-1966年）を務めるなど、日本の美術史研究界を牽引する存在でもありました。文化財専門審議会委員や『国華』誌の主幹なども歴任し、学術研究のみならず、文化行政や美術普及にも貢献しました。東京大学名誉教授、武蔵野美術大学名誉教授の称号も授与されています。

彼の研究は、単なる美術史の記述を超え、中国絵画が持つ文化や思想との深いつながりを明らかにすることで、新たな視点を提示しました。その業績は、日本の中国美術史研究の発展に多大なる影響を与え、現在でも高い評価を受けています。米澤嘉圃という名は、日本の中国美術史研究史において、常に重要な位置を占めることでしょう。彼の残した著作や論文は、これからも多くの研究者や美術愛好家たちに読み継がれ、その知見は未来へと受け継がれていくでしょう。

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