粉嶺

粉嶺（ファンレン、英語名: Fanling）は、香港新界の北東部に位置する住宅および商業地区です。隣接する上水（ションシュイ、英語名: Sheung Shui）と共に、香港18区の一つである北区において、商業と行政の中核を担っています。

MTR東鉄線の粉嶺駅が地区の玄関口となっており、駅前には大型のショッピングモールや高層住宅団地が立ち並びます。また、香港有数の大規模な公営墓地である和合石墳場があることでも知られています。

粉嶺の駅前は、KCR（九広鉄路、現在のMTR東鉄線）の開通後に開発されたエリアであり、もともとの市街地として栄えた集落は、駅から約1キロほど北東に位置する聯和墟（リュンウォーホイ、英語名: Luen Wo Hui）です。

そのため、粉嶺駅前とは別に、聯和墟にも大型のショッピングセンターやバスターミナルが存在し、地域の中心地としての役割を果たしています。聯和墟には鉄道駅はありませんが、香港島への直通バスの発着点となっており、この地域における重要な交通拠点としての役割を担っています。また、聯和墟には高級マンションが立ち並び、庶民向けの公営団地が多い粉嶺駅前とは対照的な様相を呈しています。

粉嶺は、深圳との国境に位置する沙頭角（シャータウコック）への道路、沙頭角公路の起点でもあります。ここから沙頭角へ向かうバスの主要な出発点ともなっています。具体的には、香港側の沙頭角へ向かう九龍バス78K線と、新界区専線ミニバス55K線が運行されています。

ただし、香港側の沙頭角へは、元々沙頭角に居住していた住民以外は立ち入りが制限されており、一般の者は通行許可証が必要となります。この通行許可証の申請は、粉嶺にある上水警察署の専用窓口で受け付けています。しかし、許可証が交付されるのは、沙頭角の住民と親戚や友人の関係にある者、または住民の承諾を得て訪問する者（申請書には関係住民の住所と氏名の明記が必要）に限られています。また、その住民に関わる仕事をする者やその車両（運送業や商業など）も許可対象となります。

つまり、これらの条件に該当しない者は、香港の永住権を持っていても、沙頭角への立ち入りは許可されません。これは、沙頭角が特殊な地域であること、そして国境管理上の必要性によるものです。

粉嶺は、鉄道駅周辺の近代的な開発と、歴史的な集落が共存する地域であり、その多様な側面が魅力です。香港の他の地域とは異なる独特な文化や雰囲気を体験することができます。

[参考資料]
* 香港特別行政区政府：民政事務総署：村代表選挙：郷村範囲図：粉嶺区郷事委員会 (中国語)

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