粗面岩

粗面岩とは

粗面岩（そめんがん、英語名: trachyte、トラカイト）は、火山の噴火活動に伴って地表付近や地表で比較的速やかに冷却・固結した「火山岩」に分類される岩石です。岩石学における化学組成に基づいた区分では、二酸化ケイ素（SiO₂）やアルカリ金属元素（ナトリウム、カリウムなど）が多く含まれる「珪長質岩」に位置づけられます。

この岩石は、一般的に明るい色合いを持つことが特徴の一つです。具体的には、白っぽい色から明るい灰色を呈することが多く、「優白質（ゆうはくしつ）」と呼ばれます。この色合いは、主に岩石を構成している鉱物の種類やその割合に由来します。

鉱物組成の特徴

粗面岩を構成する主な鉱物は、「アルカリ長石」です。カリウム長石やナトリウムに富む曹長石成分を含むアルカリ長石が優勢であり、これが粗面岩の明るい色合いを生み出す主要因となっています。

粗面岩のもう一つの重要な鉱物学的特徴は、二酸化ケイ素からなる鉱物である「石英」をほとんど含まない、あるいは含まれてもごく微量であるという点です。この性質は、同じ珪長質火山岩である流紋岩が石英を比較的多く含むのと対照的であり、両者を区別する上で非常に重要な基準となります。

その他、岩石全体のごく少量として、黒っぽい色合いを持つ輝石や角閃石といった有色鉱物が含まれることもありますが、その量は少なく、岩石全体の明るい色調に大きく影響を及ぼすことは稀です。

対応する深成岩

岩石は、その生成場所や冷却速度によって、同じマグマ起源であっても異なる種類に分類されることがあります。粗面岩は、地下深部でゆっくりと冷却・固結した「深成岩」のうち、「閃長岩（せんちょうがん）」と化学組成や主要な鉱物組成が非常に類似しています。

粗面岩が地表近くで急冷されたために結晶が小さく、しばしば斑状組織（大きな斑晶と細かい石基からなる組織）を呈する火山岩であるのに対し、閃長岩は地下深くで徐々に冷え固まるため、肉眼でも確認できるほど大きな結晶（特に長石類）を持つ深成岩です。このように、生成環境や組織は異なりますが、岩石を構成する成分や主要鉱物が似ているため、粗面岩は閃長岩に対応する火山岩として位置づけられています。

関連する岩石との関係

粗面安山岩との組成連続性

粗面岩に比較的近い組成を持つ岩石として、「粗面安山岩（そうめんあんざんがん、trachyandesite）」があります。粗面安山岩は、粗面岩と同様にアルカリ長石を多く含みますが、加えて「斜長石」という別の種類の長石をより多く含むという特徴があります。岩石分類上、粗面岩と粗面安山岩は、含まれるアルカリ長石と斜長石の相対的な比率によって区別されます。これは、粗面岩から斜長石の含有量が増加していくと、岩石の種類が連続的に粗面安山岩へと変化していくことを示唆しています。

流紋岩（旧称：石英粗面岩）との混同に注意

歴史的な岩石分類において、流紋岩がかつて「石英粗面岩（liparite）」という名称で呼ばれていた時期がありました。この旧称のために、現在の「粗面岩」と「流紋岩」が混同されることがありますが、現代の岩石分類では両者は明確に異なる種類の岩石として区別されています。

決定的な違いは、先に述べたように「石英の含有量」です。粗面岩が石英をほとんど含まないのに対し、流紋岩は石英を比較的多く含む珪長質火山岩です。したがって、名称に「粗面岩」という言葉が含まれていても、旧称である「石英粗面岩」は現在の粗面岩とは異なる、石英を多く含む流紋岩を指している点に留意が必要です。このように、石英の有無や量によって、両者は分類上明確に区別される重要な指標となります。

もう一度検索