粟津貝塚

粟津貝塚：琵琶湖に眠る縄文時代の記憶

粟津貝塚は、滋賀県大津市の琵琶湖南端、瀬田川付近の湖底に位置する遺跡です。別名、粟津湖底遺跡とも呼ばれています。貝塚といえば、一般的には海で採取された貝殻の廃棄場所を指しますが、粟津貝塚は琵琶湖という淡水湖で採取された貝殻が主体である点が特徴です。

遺跡の概要

遺跡の所在地は、北緯34度58分53秒、東経135度54分28秒。この地がゴミ捨て場として利用されていたのは、縄文時代中期頃と推定されています。1952年に藤岡謙二郎によって発見され、当時は船上からも湖底に白い貝殻が沈んでいる様子が確認できたそうです。

出土品

粟津貝塚から出土する貝殻は、主に淡水性のものです。特に、セタシジミの貝殻が全体の77％を占めています。貝殻以外にも、イノシシやシカなどの哺乳類の骨、スッポンなどの爬虫類の骨、ギギ、コイ、ナマズ、フナ、ワタカなどの魚類の骨も出土しています。また、トチの実やドングリ（イチイシイの実）の皮、ヒシなどの植物性の遺物、土器などの人工物も発見されています。

形成年代

放射性炭素年代測定の結果から、粟津貝塚は約4000年前から5000年前にかけて形成されたと考えられています。さらに古い時代のものとして、9000年以上前のヒョウタンの種子や、ヒシ、クリ、コナラの果皮の破片も発見されています。

琵琶湖の水位変動と貝塚

現在、粟津貝塚は湖底にありますが、縄文時代中期には琵琶湖の水位が現在よりも低く、貝塚は湖岸に位置していました。調査の結果、当時は琵琶湖の東岸であったとされています。その後の水位上昇によって湖面下に沈んだため、微生物によって分解されやすい植物性のゴミも完全に分解されることなく残存し、当時の食生活を知る上で貴重な考古学的資料となっています。

粟津貝塚は、琵琶湖の水位変動という自然現象と、縄文時代の人々の生活が織りなす歴史を今に伝える貴重な遺跡と言えるでしょう。

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