精神世界

精神世界とは

精神世界は、特に北米に由来するニューエイジ思想を基盤に、古代から現代までのオカルティズムや日本独自の霊学、自己探求や精神の変容に関する多種多様な情報や思想が共存する文化的領域です。この「精神世界」の語は1970年代末頃から日本で一般的に使用され始め、スピリチュアリティという関連用語とも深い関わりを持っています。

精神世界と言語の歴史

精神世界を研究している宗教学者の島薗進によれば、「精神世界」という言葉の初出は1977年にさかのぼります。この年には、阿含宗関連の平河出版社によって季刊誌『ザ・メディテーション』が創刊され、同年末の号に特集企画「精神世界の本・ベスト100」が掲載されました。1978年には、新宿の紀伊国屋書店で「インドネパール精神世界の本」というフェアが開催され、この頃から書店で「精神世界」を題材にした書籍が増え始めました。2000年版の『精神世界総カタログ』には、なんと10588冊もの書籍が掲載されています。

新霊性運動

島薗は、ニューエイジ運動という言葉を学術的な用語として用いることには疑問を呈し、日本の精神世界や欧米のニューエイジを一括で捉えるための「新霊性運動」や「新霊性文化」という言葉を提唱しました。この観点から見ると、精神世界とニューエイジは相互に関連し合う現象として捉えられ、文化的な特性を持ちながらも、グローバルな運動として進化しているのです。

スピリチュアリティとの関連

スピリチュアリティ（英: spirituality）は精神世界において非常に関連性が高い概念で、特にキリスト教においても幅広く使われてきた言葉です。神学的には「霊性」という訳がされ、その重要性は20世紀に入り再評価されました。1970年代に盛んになったニューエイジ運動では、伝統的なキリスト教の枠を超えた新たな価値観が広まり、特に1980年代以降、スピリチュアリティという語が北米で頻繁に使用されるようになりました。

日本でも1990年代後半からスピリチュアリティという言葉が使われ始め、特にホスピスや死生学においては「スピリチュアル」や「スピリチュアリティ」という言葉が一般的に定着しています。

スピリチュアルブーム

2000年代に入ると、スピリチュアルという言葉が一気に広がり、スピリチュアルブームが現れました。このブームの中で、江原啓之によるスピリチュアル・カウンセリングが大変人気を博し、彼が著した本もベストセラーになりました。島薗は、江原の成功が現代日本におけるスピリチュアルという語の普及に大きな影響を与えたと考えています。

また、2002年から毎年開催されている「スピリチュアル・コンベンション」は、癒しをテーマにした精神世界の見本市として日本のスピリチュアリティ文化の一端を担っています。

現代日本において、通俗的なスピリチュアリティ文化においては、言葉自体はあまり使われず、むしろ「スピリチュアル」を名詞として扱う傾向が強まっています。これは、スピリチュアリティとスピリチュアルの概念が混合されてきた結果ともいえるでしょう。

関連文献

精神世界に興味を持つ方々へ、以下の文献をお勧めします。

• - 島薗進『精神世界のゆくえ―現代世界と新霊性運動』
• - 『精神世界の本』平河出版社,
• - 内藤景代『わたし探し・精神世界入門―ヨガと冥想で広がる「心の宇宙」』

これらは、日本における精神世界やスピリチュアリティの理解を深めるための資料となるでしょう。

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