糖質コルチコイド

糖質コルチコイドの概要

糖質コルチコイドは、副腎皮質の束状層にて合成されるホルモンで、グルココルチコイドとも呼ばれています。このホルモンは主に免疫系と代謝系において重要な役割を果たしており、その影響は胎児の発育や体液のバランスにも及びます。

主な種類

• - コルチゾール
• - コルチコステロン
• - コルチゾン

生理学的作用

糖質コルチコイドは、ACTH（副腎皮質刺激ホルモン）によって調節され、血中の濃度は時間帯によって変動します。これにより以下のような多様な効果が得られます。

免疫系への影響

糖質コルチコイドは、免疫系における抗炎症メカニズムを持っており、以下の働きをします。

• - 抗炎症タンパク質の産生を促進
• - 炎症に関連するタンパク質の合成を抑制

さらに、Tリンパ球の恒常性の維持にも関与しており、生理的なバランスを保つために重要です。トランスジェニックマウスを用いた実験では、糖質コルチコイドに対するT細胞の感受性の変化が観察されています。

代謝系への影響

糖質コルチコイドの「糖質」という名は、グルコース代謝に深く関連していることから来ています。具体的には、コルチゾールは食事を摂らない状態において、血中のグルコース濃度を維持するためのさまざまな過程を刺激します。

• - 糖新生の促進: 肝臓においてアミノ酸やトリグリセリドを基にグルコースを合成します。
• - アミノ酸動員: 肝外組織からアミノ酸を引き出し、糖新生の基となります。
• - グルコース取り込み抑制: 筋肉や脂肪細胞によるグルコースの取り込みを減少させ、保存に役立ちます。
• - 脂肪分解促進: 脂肪細胞から脂肪酸を抽出し、エネルギーとして利用します。

発育への影響

糖質コルチコイドは胎児の成長にも深く関わっています。特に、肺の成熟を促進し、呼吸機能に必要な界面活性剤の生成を促します。これが不足すると、出生時に肺が未熟であることから問題が発生することがあります。さらに、脳や消化器系の発達にも重要な役割を果たします。

認知や感情への影響

糖質コルチコイドは、記憶の形成や感情的な出来事の記憶において重要な影響を及ぼします。特にノルアドレナリンと共に働き、ポジティブな感情やネガティブな感情に関連する情報の記憶を形成します。周知の通り、高い糖質コルチコイド状態では、ストレスを伴う記憶が強化される一方で、中立的な情報の記憶は減少する傾向があります。

体液恒常性の維持

糖質コルチコイドは、体内の水分やナトリウムの調整にも寄与し、これにより細胞外液の量を正常に保つ役割を果たします。

作用機序

糖質コルチコイドは、細胞内の受容体に結合することで遺伝子の発現を調整します。これにより、抗炎症作用やグルコース生成を促進します。また、非遺伝子作用を通じて他のタンパク質やmRNAと結合し、直接的に炎症の実効因子を抑制することも知られています。

医薬品としての応用

さまざまな合成糖質コルチコイドが医療で使用されており、効果や持続時間は異なります。主に経口投与されますが、皮膚への塗布など他の投与法も用いられています。これらの薬は、体内の脂肪細胞、筋肉、肝臓などに作用し、様々な疾患治療に役立っています。

関連する病状

糖質コルチコイドに関連する疾患には、クッシング症候群やアジソン病があります。これらはそれぞれ、ホルモンの過剰または不足に基づく健康問題です。

もう一度検索