糸のこ盤

糸のこ盤とは

糸のこ盤（スクロールソー）は、手動の糸鋸を機械化した電動工具です。木材加工を主な用途としますが、ブレードを交換することで薄い金属板やプラスチックの切断も可能です。特に、複雑な曲線や切り抜き文字、透かし模様など、精密なクラフト作業に威力を発揮します。

初期の糸のこ盤は足踏み式で、「ミシンのこ」とも呼ばれていました。手動の糸鋸と比較して、アームで支えられているため「ふところ」が深く、より大きな材料を扱えるのが特徴です。一般的にふところの深さは40cm程度ですが、製品によっては30cmから60cmのものもあります。

ストローク数は、1分間に300回から1700回程度で、切削屑を吹き飛ばす送風ブロアーや速度調節機能が付いている製品が多く、作業性を高めています。

糸のこ盤の歴史

糸のこ盤の歴史は、手動の糸鋸から動力駆動、そして現在の電動糸のこ盤へと進化してきました。

1829年: M'Duff氏が、ロンドンのメカニック協会で最高の機械に与えられる賞を受賞。これは、糸のこ盤に関する最初の記録された特許とされています。
1500年代: ドイツの職人が、狭い鋸刃の製造方法を開発。フランスの職人ブールが、複雑なデザインを切るためのフレームを開発し、これは「ビュールのこぎり」と呼ばれ、現在のフレットソーや糸鋸の原型となっています。
1834年: エリアス・ハウが、手動で針が左右に動く機械の特許を取得。
アイザック・シンガー: 足踏み式で針が上下に動く機械を開発。
1860年代: アメリカで、足踏み式、手動クランク式、ペダル式の機械式糸のこ盤が登場。
1863年: ウィリアム・ドーンが糸のこ盤の特許を取得。
1873年: ヘンリー・ビックフォード、ウイリアム・ドブソン、アイザック・ハードが糸鋸の特許を申請。
1873年: マーヴィンE.ウェラーが、ジグソーの改良ではなくテーブル付き糸のこ盤の特許を取得。
1874年: ドイツのヘルムート・アベルが、一定の張力を保つ「コンスタントテンションソー」を発明。
1921年: カール・モバーグがクランク式糸のこ盤を発明。
1930年代後期: 現在の電動糸のこ盤の原型が開発。
1885年: W.Fとジョン・バーンズ社が、足踏み式糸のこ盤の特許を取得。
1920年代: 電気モーターを動力源とした糸のこ盤が登場。
1923年: デルタ社のタウツが、世界初の糸のこ盤「アメリカンボーイ」を発明。
1927年: バーネス社が、24インチのふところを持つ電動糸のこ盤を発売。
1930年: デルタ社が、頑丈なアームを持つ糸のこ盤を発売。
1974年: ヘルムート・アベルがヘグナー糸のこ盤の安定した緊張装置の特許を取得。
1982年: R.Bインダストリーズが、アメリカ初の糸のこ盤市場に参入。
1980年代: トム・ソマーヴィルが、「二重の平行したリンク」ドライブシステムを開発し、エクスキャリバーの商標で販売。
1980年代後期から1990年代: 安価なベンチトップ糸のこ盤が多数登場。

糸のこ盤の各部の名称と機能

糸のこ盤は、様々な部品から構成されており、それぞれが重要な役割を果たしています。

テーブル: 材料を乗せるための台。傾斜をつけて切断できるものもあります。
テーブル固定ノブ: テーブルの角度を調整・固定するためのノブ。
ブレード: 材料を切断する糸鋸刃。
ブレードホルダー: ブレードを固定する部分。
ブレード調整レバー: ブレードの張り具合を調節するレバー。
ガート: ブレードに触れないように保護する安全装置。
速度調整ダイヤル: ブレードの上下動スピードを調整するダイヤル。電源スイッチを兼ねるタイプもあります。
集塵穴: 切削屑を吸引する集塵機ホースを接続する部分。
押え板: 材料をテーブルに押し付けるパーツ。材料の跳ね上がりを防ぎます。
押え板調整ノブ: 材料の厚みに合わせて、押え板の位置を調整・固定するノブ。
送風ブロアー: 空気を吹き出して切削屑を飛ばし、切断箇所を見やすくします。
フリーアーム: アームが跳ね上げられる機構。窓抜き作業に便利です。

主なメーカー

糸のこ盤を製造している主なメーカーは以下の通りです。

マキタ
京セラインダストリアルツールズ
ユタカ
日立工機
旭工機
ヘグナー(HEGNER)
プロクソン(PROXXON)
ドレメル(DREMEL)

参考資料

『DIY工具選びと使い方』ナツメ社
『DIY道具事典』学研パブリッシング
『TOOLS NOW道具大全』美術出版社
The New Scroll Saw Handbook Patrick Spielman著

外部リンク

PROXXON（プロクソン）
DREMEL（ドレメル）
HEGNER（ヘグナー）
ASAHIKOKI（旭工機）
* 糸のこ盤6社比較（英文）

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