紀伊中ノ島駅

紀伊中ノ島駅：歴史と産業遺産を刻む阪和線の駅

紀伊中ノ島駅は、和歌山県和歌山市中之島に位置する、西日本旅客鉄道（JR西日本）阪和線の駅です。駅番号はJR-R53。この駅は、単なる交通の要衝というだけでなく、日本の鉄道史、そして産業遺産を知る上で貴重な存在となっています。

開業から和歌山線との分岐、そして現在へ

紀伊中ノ島駅の歴史は、1932年1月1日に阪和電気鉄道の中間駅として開業したことに始まります。当初は「阪和中之島駅」という名称でした。駅は築堤上に建設され、付近では既存の国鉄和歌山線が乗り越えるという、当時としては珍しい構造となっていました。

1935年1月1日、国鉄和歌山線との連絡強化のため、両線の交点付近に国鉄紀伊中ノ島駅が開業。これに伴い、阪和電気鉄道の駅は102メートル南へ移転しました。現在の駅舎は、この際に国鉄が建設したもの、ホームは阪和電気鉄道が建設したものです。

その後、1936年9月25日、阪和電気鉄道の駅名も「紀伊中ノ島駅」に改称され、両駅は共同使用されるようになりました。阪和電気鉄道は南海鉄道を経て国鉄に買収され、国鉄阪和線となり、紀伊中ノ島駅は阪和線と和歌山線の乗換駅として重要な役割を担うことになります。

しかし、1972年3月15日のダイヤ改正で、和歌山線の経路変更により、紀伊中ノ島駅は阪和線単独の駅となり、乗換駅としての機能は失われました。1974年9月30日には、旧和歌山線（田井ノ瀬～紀和間）が廃止されました。

貴重な産業遺産：八幡製鉄所のレール

2008年、紀伊中ノ島駅のホーム屋根を支える鉄骨が、八幡製鉄所の創業当初に製造されたレールを転用したものであることが判明しました。この発見は、日本の重工業・鉄鋼史を語る上で貴重な産業遺産として注目され、2009年には産業考古学会の推薦産業遺産に認定されています。

駅構造と周辺環境

紀伊中ノ島駅は、相対式2面2線の高架駅です。開業当時からの古い駅舎が現存し、独特の雰囲気を醸し出しています。現在は無人駅となっており、ICOCA対応の自動改札機や自動券売機が設置されています。バリアフリー設備は整っていないものの、改札外にはトイレが設置されています。また、駅構内にはJR西日本メンテック和歌山道場という研修施設もあります。

駅周辺は主に住宅地となっており、静かな環境にあります。和歌山市立紀之川中学校、日本郵便和歌山天王郵便局、和歌山刑務所などが近隣にあります。

近年の変遷

近年は、紀州路快速の停車本数減少など、利用状況の変化もみられます。しかし、歴史的な駅舎と産業遺産、そして静かな住宅街に囲まれた独特の雰囲気は、紀伊中ノ島駅の大きな魅力となっています。 この駅は、地域の生活の足として、そして日本の鉄道史と産業遺産を偲ばせる場所として、これからもその役割を担い続けることでしょう。

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