紀伊続風土記

紀伊続風土記の概要

紀伊続風土記（きいぞくふどき、またはきいしょくふどき）は、紀州藩によって編纂された重要な地誌であり、紀伊国の文化や歴史を詳細に記録しています。これは、江戸幕府の指導のもと、文化3年（1806年）に藩士であり儒学者の仁井田好古を総裁として編纂作業が始まりました。彼をはじめ、仁井田長群や本居内遠、加納諸平、畔田翠山などの優れた学者たちが協力して、この大計画に取り組みました。

編纂作業は非常に大規模で、紀北4郡の調査が開始からわずか3年後に完了しますが、仁井田好古の任務離脱によって文化5年（1808年）から文化8年（1811年）にかけては作業が中断されることとなりました。様々な課題に直面しつつも、編纂作業は文政13年（1831年）に再開され、最終的には天保10年（1839年）に完了します。このプロジェクトには33年の歳月がかかり、地域を網羅する形で徹底した調査がなされました。

構成と内容

紀伊続風土記は本編97巻を含む全195巻から成り、これには「高野山之部」と呼ばれる81巻と付録の古文書編17巻も含まれています。文書は、第1巻から第3巻で提綱を示した後、総論や古風土記の逸文、そして国造、国司、守護、国主、制度、神社仏寺の総論が続き、さらに個々の郡に関する詳細な記述がなされています。具体的には、和歌山（若山）を含む各郡に関して、古郷名、村名、そして各村々の荘ごとの詳細が整理されています。

その記述は詳細にわたり、田畑の石高や人口、自然地理、水利、及び古代社寺や城跡の情報も豊富に含まれています。特に高野山の部分は、その周囲の寺領について非常に詳細に描かれ、地域の文化と歴史を垣間見ることができます。

この地誌は、紀州の近世の歴史を知るために欠かせない重要な資料であり、多くの地域研究者にとって基礎的な情報源として利用されています。多くの近世録の中でも、その内容の充実度から特に高い評価を得ており、今日においても紀伊続風土記に収載された情報が地域の調査によって再発見されることが多々あります。

翻刻と後世への影響

紀伊続風土記は1910年から1911年にかけて和歌山県神職取締所により翻刻され、その後も何度か複製本が発行されています。そのため、現代でも多くの人々がこの資料にアクセスできるようになっています。翻刻本は、各巻において郡ごとの提綱や詳細を示し、紀伊国の文化や経済、地理に関する貴重な情報を提供しています。

このように、紀伊続風土記は紀州藩の歴史を知るための貴重な文献であり、地域の理解を深めるうえで欠かせない存在です。今後もさらなる新たな発見が期待されるところです。

もう一度検索