本居内遠

本居内遠（もとおり うちとお）

本居内遠は、寛政4年（1792年）に尾張国名古屋で生まれた江戸時代後期の国学者、俳人です。幼名は鎌次郎、後に久次郎、安次郎、弥四郎と称しました。号は木綿垣、榛園、狂歌の号は時曳速躬。本姓は浜田氏で、実名は孝国、高国、秋津といいました。本居宣長の養子である本居大平の門下に入り、その学問を受け継ぎました。子に国学者の本居豊穎、歌人・音楽家の荒巻利蔭、陸軍大佐の徳田正稔がいます。

生涯

名古屋城下の書店「万巻堂菱屋」の息子として生まれた内遠は、幼い頃から俳諧や狂歌に親しんでいました。15歳で本居宣長の著作に触れ、18歳で植松有信の『源氏物語』講読を聞き、24歳で鈴木朖の『古事記』講義を受けるなど、早くから学問への関心を示しました。27歳で市岡猛彦に入門し、翌年には江戸に遊学して清水浜臣や石川雅望と交流を深めました。文政3年（1820年）には、本居宣長の養子である本居大平に入門し、国学を本格的に学び始めました。天保2年（1831年）には、大平の養子となり、大平の娘である藤子を妻に迎えました。

紀州藩主の徳川斉順に仕え、藩命により『紀伊続風土記』や『新撰紀伊国名所和歌集』の編纂に携わるなど、藩の事業にも貢献しました。嘉永4年（1851年）からは藩の神道学問所で講義を行い、安政元年（1854年）には江戸の藩校古学館の教授に就任しましたが、翌安政2年（1855年）に赤坂の藩邸で亡くなりました。

学問と著作

内遠は、国学者として『古事記』などの古典研究に励む一方で、俳人、歌人としても才能を発揮しました。また、後奈良天皇が遺したなぞなぞ集『後奈良院御撰何曾』に挑戦し、その解答集である『後奈良院御撰何曾之解』を出版しました。

この中で、問答の一つである「母には二度会うが、父には一度も会わないものは？」というなぞなぞに対して、内遠は「くちびる」と答えましたが、当時の発音（ハ行を現代語のファ行の子音で発音）を考慮せず、「母は歯々、父は乳を意味し、自分の歯に上下唇を二度当てることはできるが、自分の唇で自分の乳を吸うことはできないから」という解釈を行いました。これは、当時の発音と現代の発音の違いを考慮しなかった誤った解釈であり、当時の言語変化の研究において興味深い事例として知られています。

参考文献

* 愛知県姓氏歴史人物大辞典編纂委員会 編『角川日本姓氏歴史人名大辞典23 愛知県』角川書店、1991年10月30日。ISBN 4-04-002230-0。

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